場外戦1

特生自衛隊の歴史は長い。半世紀ほど前に自衛隊が発足した当初は陸・海・空の3軍から構成されていたが、発足から間もなく首都圏を襲った巨大生物災害を機に有害な特殊生物の駆除を目的に設立されたのが特生自衛隊である。

で、私はその特生自衛隊に所属する権堂特佐だ。正式には1等特佐、「特生自衛隊の」「1等佐官」つまり軍隊における大佐というわけだ。自衛隊は軍隊ではないというタテマエ上大佐と名乗るわけにいかないのだ。職務は南関東第2大隊長、東京と神奈川の怪獣退治を指揮している。

4つの自衛隊のうち最後発の特生自衛隊は市ヶ谷の本省ではなく練馬の駐屯地に間借りしている。なんだよ練馬って東京のくせに農地だらけだし牧場はあるし…まあ私は職業柄田舎は特に気にならないが。

駐屯地で筋トレをやっていたら本庁から呼び出された。テレビ画面越しに、指令を寄越してくる50手前のおっさんの顔が見える。おっさんの名は池元。階級は特将=特生将官つまり軍隊でいう所の大将だ。役職は幕僚長。要するに特生自衛隊で一番偉いおっさんということだ。

「権堂一佐、急な案件で悪いが大田区川崎市間の多摩川河川敷で巨大生物の目撃報告があった。科特庁から来た資料を転送してあるから確認してくれ」

いかつい風貌の割に池元のおっさんは物腰が柔らかく紳士的だ。科特庁というのは8年ほど前に発足した官庁で、まあ魔法だったり亜人だったりといった「普通の役所が扱わないほどバカバカしい案件」を扱う所だ。ここの関係機関調整課と、駐屯地を管区に含む新宿支署の職員とはよく顔を合わせる。

「はあめんどくせ…」

私はテレビ画面の電源を落とす前にウッカリ口を滑らせてしまった。池元のおっさんにバッチリ聞かれてしまった。

「そういうな、仕事なんだから」

池元のおっさんは苦笑している。通信を切り、パソコンの受信ボックスを見ると科特庁から資料が来ていた。添付されていた写真を見ると、明らかに見覚えのある怪獣とも動物ともつかない物が写り込んでいた。ケツァルトルと呼ばれる異世界産の小型怪獣だ。通常はインドサイ程度の大きさのものが多いが、今回のは後ろの風景から察するに明らかにデカい。全長は恐らく15メートルほどといったところか。

「確かにデカいけど、この程度なら警察に任せりゃよくねえか?G5X出せば対処出来ないサイズじゃねえだろ」

私は傍らにいた副官の吉田に質問をとばす。吉田は特殊車両の操縦を専門にする男で、趣味が筋トレという筋肉信者だ。彼のチームは全員筋トレマニアなので、筋骨隆々な古代神話の英雄になぞらえて「ハーキュリーズ」と呼ばれていたりする。階級は3等特佐だから軍隊なら少佐だ。

「警察は県を跨ぐ場所だと調整に手間取りますからね。今回はちょうど東京と神奈川の間ですから」

肩にバーベルを担いだまま答える吉田。なぜ隊長執務室でまで筋トレをしているんだコイツは…

「じゃあ科特庁はどうだ?あそこもG5X持ってるだろ」

「管轄の品川支署にはG5要員がいないそうです。いいじゃないですかここで実績作っとけば来年の予算強気に要求できますし」

ダンベルを持ち上げながら吉田が笑う。

河川敷は草が生い茂っていた。ススキの類は背丈も高く、3~4メートルはあるだろうか。ケツァルトルが姿を隠している可能性は低くない。私が送り込んだ隊員達は慎重に草原をかき分けて進んでいく。

「いたぞ!」

隊員の一人が通信機を通じて叫ぶ。各隊員は怪物との距離を一定に保ちつつ後退してくる。私はその様子をハーキュリーズの運転する車両の中から眺めていた。ほどなくして問題のケツァルトルが姿を現した。なるほどデカい。大型バスくらいのサイズはあるだろうか?

「こちらゴリラ1、射撃の可否を問う」

隊員は10名ずつユニットで行動している。それぞれのユニットはユニットリーダーの苗字の頭文字の名詞で呼ばれるのが慣習であった。ゴリラは後藤一尉が率いるユニットなので、頭文字のGからゴリラと呼ばれている。同様に佐々木一尉率いるユニットはスネーク、田代一尉ならタイガーとなる。

「こちら本部、射撃を許可する」

私の指示一つで各隊員が一斉に射撃を始める。ケツァルトルはデカいし獰猛な性格なのだが、身体の構造は大型哺乳類とあまり変わらない。特生自衛隊ならG5Xチームを動員するまでもなく対処可能だ。戦車の装甲さえ貫通する大型機銃の一斉射撃を食らい、巨大ケツァルトルは数分で倒れた。

「総員、合掌」

ケツァルトルは好き好んでこの世界に現れるわけではないし、快楽のために人に危害を加えるわけでもない。コイツを死なせるのは人間側の都合だ。死者には常に礼儀を以て接しなければならない、特に私達軍人(法解釈上は自衛官は軍人ではないが)は尚更だ。私の合図で全隊員がケツァルトルの亡骸に手を合わせた。

「兄さん、お疲れ様です」

亡骸は科特庁の巨大生物研究局が引き取る。科特庁のトラックから降りてきた白衣を着た若い女性は巨大生物研究局の権堂千夏博士―私の妹だった。

「おお千夏か、ケツァルトルの研究は進んだかい?」

「何とも言えないわ。少なくとも身体の組成は私達の世界の哺乳類とほとんど変わらない。ワームホール経由以外にどうやって現れるのか分かれば対策の立てようもあるんだけど…」

妹の乗ったトラックとは反対方向へ発車した車内で携帯電話を見ると、いつの間にかメールが来ていた。差出人は黒木1等特佐、私の同期だ。

「今日横田に寄港だから飲みに行こう。黒木」

メールの文面は彼の性格を反映して素っ気なかった。黒木は第3特殊航空防衛戦隊の隊長を務めている。特殊航空機スーパーX3を主軸とした、対巨大怪獣戦の切り札となる部隊だ。軍隊における空母や戦艦と同様、スーパーXは1機1機が独立した部隊を構成している。そのため、黒木の職務は早い話がスーパーX3の機長というわけだ。スーパーX3は普段は新千歳を母港としているが、今日は横田にいるということは恐らく米軍との共同訓練か何かがあったのだろう。

ハーキュリーズの運転はいつも荒っぽい。私はひとまず練馬の駐屯地に戻って報告書を作らなければならない。ケツァルトルとの戦いよりも過酷なハーキュリーズの車両での移動をこなしながら、私は報告書の文面を考えなければならないのだ。

つづく?

 

 

 

 

 

雑記41

甥が野球教室に参加するというので保護者として神宮球場へ行ってきました。神宮球場は春先や晩秋でもナイターゲームだと普通にメチャクチャ寒いんですよね。私はプロ野球観戦といえば福岡ドームという超温室環境で育ったので尚更そう感じます。

で、もう12月なわけで神宮球場は寒過ぎィィィィィィィィィィィって感じでした。流石に野球教室は室内練習場でやってましたね。私は野球教室の間はヒマだったので久々にバッティングセンターへ。最初は球が全く見えず空振りを連発していましたが、目が慣れてくると当たるようになりました。それでも中々ボールを捉えきれずゴロが多かったです。後半はいい当たりも出てきたので次行ったら長打も打てると思います。

しかし久々にバットを振ったので手へのダメージがヤバイ。右手の中指付け根は思い切り皮がむけました。バッティンググローブを持っていけばよかった。肩や肘にも微妙に違和感が残ります。日頃の運動不足の代償が…今後はもう少し身体を動かしていこうと思いました。

話題がねえぜ。デレステで5万円溶かした話してもしょうがないし艦これの話題も今のところ別に…って感じですね。さかこ君に飲みの誘いを先週今週で都合3回断られた話でもする?(私怨)

あ、あと先週は京都から遠路はるばるお越しいただいただしマスター氏と麻雀対決をしました。私の見せ場は唐突なオールスターツモでチップ18枚荒稼ぎした所とメンホンチートイ狙い撃ちくらいしかありませんでした。先日の九蓮テンパイを上がり損ねて以来どうもツキが下落傾向にあるような気がします。

その後はもう滅茶苦茶に酒を飲み騒いでいました。だしマスター氏は新幹線の時間があるので1次会までで帰られました。また飲み会しましょう。2次会はサイゼリヤでアホみたいに白ワインをドバーッと飲み記憶ねえぜ。アッキーが酔っ払って色々語っていたような。あと岬ちゃんは酔っ払っても吐いたことは無いとか。女の子が吐くほど酒を飲むのは…やめようね!

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↑このくらい理不尽なレベルの強さがほしい。

温泉旅行に行きたい。可愛い女の子の膝枕が付いているとなお良し(もうこのネタ通じる人少なそうだな)。スイカズラ 温泉旅行 ひざまくら

おわり

 

第37話

年末年始に向けて街の浮かれ具合が加速度的に高くなってゆく季節。浮かれたアホどもに釣られて有象無象の妖怪だの物の怪だのといった連中が街に出没することが多くなるので、私達の職場はこの季節はとても忙しい。街にいるのは化け狸先輩のように酒を飲んで騒ぐだけの善良な妖怪ばかりではないのだ。

そんなわけで私のデスクは報告書で埋め尽くされている。私は書類決裁はかなり速い方であり、平時ならば決裁待ちの書類など一枚も残ないのだが年末だけはそうもいかないのである。既婚の秋山係長は奥さんに頭が上がらないのか、この時期はよく有給を取って家族サービスに精を出している。

気分転換に葵ちゃんの買い物に付き合ってあげた私だったが、帰り道で出くわした浮浪者のオッサンが臭過ぎたのには閉口した。その悪臭をまともに吸ってしまった葵ちゃんは気分が悪くなったらしく、私は荷物持ちどころか葵ちゃんまで背負って帰るはめになった。

姉の茜ちゃん曰く、葵ちゃんは幼少期から狐娘の中でも突出して嗅覚が鋭いらしく、いなり寿司に使う醤油が変わったら一発でわかるという。大した才能だが日常生活では便利とは限らないのである。白崎さんが脱臭用のハーブを持ってきてくれたので、葵ちゃんの枕元に置いておいた。

翌日。本庁から神楽坂が来ていた。来期の組織改正についての話があるのだという。科特庁は発足からまだ10年も経っておらず、組織構成については手探りな部分が多いのである。

「従来通り東京方面本部の下に新宿支署を置く構造は変わらない。米長さんは引き続き7級職にあって署長を務めることになるね」

神楽坂が説明を始めた。7級職、即ち特務課長よりも上には8級職=部長しかない。本部長と傘下の署長が同格ではおかしいので、米長コマンダーの7級職続投はある意味必然ではある。

「で、島やんだけでなくドカタや秋吉からも要望があったんだけど、来年度から副署長を2名配置することになった」

「ああいいっすねえ~」

現行の署長補佐1名体制は明らかに無理がある。私に限らず、北支署の土方も江戸川支署の秋吉もキャパシティの超過をずっと訴えてきた。

「副署長には課長級を以て充てることが決まった。したがって島やんは6級職に昇任ということになるよ。やったね」

と神楽坂。6級職から上の職層には超過勤務手当が付かないので、嬉しいかと言われると微妙なラインではある。

「もう一人の副署長は?」

私は当然そこが気になったので質問してみた。

「俺だよ。せっかく本庁に行ったけど1年で出戻りだ。まあ昇任と引き換えだから悪くはないさ、出世は男の本懐だしな」

と神楽坂。まあ新宿支署の発足当初から、というより科特隊米長班の頃からいたので当然の人選ではある。しかし本庁もよくこの男を手放したものだ。ちなみに新宿以外の支署は大規模な異動が多いらしく、高井戸先輩の率いる世田谷支署には土方・秋吉が新たに課長=副署長として配置されるという。荒川の糞親父が今度は多摩川に現れるということか…その影響で中須田は統括係長に昇任するらしい。

嬉しい情報もあった。門原さんが客員待遇でGユニット研究課に入ることが決まったという。エターナルメモリの情報が欲しい科特庁とユニットのメンテナンス等で協力者を探していた門原さんの思惑が一致したらしい。正式な職員ではなく、あくまで「たまに顔を出す」程度の関係らしいが、門原さんが科特庁の(科特隊時代から続く)流星のバッジを身に着けるのは実に7年ぶりである。

そんなわけで来年度の新宿支署の顔ぶれがある程度見えてきた。署長の米長さんは変わらず。島畑・神楽坂の両課長が副署長。4人の4級職=係長の内、最年長の秋山係長が5級職=統括係長となり3係長を兼任。1係長の豊之内、2係長の新城、4係長の矢吹は留任。

異動者としては洲本さんが陰陽師がどうしても必要だという世田谷支署へ行くことになった。米長さんと高井戸先輩の話し合いで決まったらしい。世田谷支署の管内には怨霊の類が出るエリアが多いらしく、陰陽師の職員で世田谷へ異動出来るのが洲本さんしかいなかったらしかった。洲本さんに抜けられるのは困るが、米長さんが同意した以上は仕方がない。

トレード要員?として世田谷からは藤岡富士夫主事が異動してくることになった。坂上と猛士時代の同期だった彼は、10代目吹雪鬼(フブキ)を襲名した現役の戦鬼である。一つの職場に戦鬼が3名も集まるのは極めて異例であるが、それだけ新宿支署の管内では戦鬼を必要とする案件が多いのである。

一方でホリ隊員は本庁直属になった。G5Xユニットの保守整備を効率化するため、科特庁のG5チームは各方面本部で一括管理することになったのだという。私はその方針自体は正しいとは思うが、新宿支署の貴重な若手男性職員が一人減ってしまうのは地味に困った問題である。まあこればかりは文句を言っても仕方のないことなのだが。

新人3名はそのまま1級職=主事として残留、研修に来ていた学生3名のうち宮前さん妹は卒業に伴い1級職主事として新宿支署の正規職員になる。一之江さんと鹿島さんは引き続き研修生として残ることが決まった。あと(私のゴリ押しで)葵ちゃんを1級職主事として採用することに成功した。茜ちゃんと陽ちゃんについては引き続き事務職員という体で残ることになる。

「ホリ君を持っていくなら男性職員を補充してください。私達と同じウィザードでいい人材を探してもらえると助かります」

私は神楽坂に無理を承知で依頼しておいた。彼が本庁に戻るのを見送って庁舎に戻ってくると、葵ちゃんが熊谷さんの指導を受けていた。彼女の魔法はまだ発芽したばかりである。なんとか来年の4月までには実用レベルまで成長して欲しい。狐娘だってやれば出来るのだ。でも無理はさせたくないという気持ちもある。

私が悩んでもどうにかなるものでもない。とりあえず今は眼前の書類の山を倒さなければならない。熊谷さんが淹れてくれたコーヒーを貰い、私は膨大な数の書類の決裁作業を再開した。

つづく

 

雑記40

麻雀にけっこう長いこと触れてないので明日ちゃんと打てるか不安です。

私のかつて所属していたアニメサークルは、いつの間にか女性がいなくなり私が入部した頃のような男所帯に回帰しているようですね。(筆者注;ここでいう女性はジェンダーの話です。生物学的にマ○コが付いているかどうかではありません)やはりオタクサークルが他のウェイ系サークルと差別化して生き残っていくには、純化路線が一番手っ取り早いのかもしれません。

私の現役時代には、サークルには女性部員がそれなりにいました。銀子嬢に岬ちゃんにアッキーの彼女にひたか氏などなど…。しかし女性問題が元で弊サークルは私の高校時代からの友人と袂を分かつことになりました。まあ彼の性格からして女性絡みがなくてもいずれはトラブルを起こしていたかもしれませんが。

そんなわけで私はサークルに女性部員が入ってこなくなったからと言って気に病む必要は全くないと思います。男子校みたいなバカなノリで楽しめるのがオタクサークルですから。もちろん女性部員が入ってきたからといって拒む必要もありませんが。

そんなアニメサークルで今一番人気の女の子がねねっちこと桜ねねです。池沼女子大生ねねっちは一部から「マン毛を油そばにして食べたい」と言われるくらいの人気があります。ちょっと注意力が足りてなくてやらかしただけなのに池沼扱いされててかわいそうだと思いました。

艦これ劇場版に関しては「思ったほどクソじゃなかったな」という気持ちと「やっぱりクソじゃないか(憤怒)」という気持ちがせめぎ合っているので感想は特にございません。まあ艦これ運営の無能っぷりとテレビアニメ時代のやらかしの数々を加味して「やっぱクソ」ということで。映画に出ることが決まった艦娘たちが「犠牲者」呼ばわりされてたのは流石に草。

九次元大霊の降臨により全ての深海棲艦がいなくなった世界。用済みとみなされた艦娘は二束三文の退職金を押し付けられ、鎮守府を追われてしまう。時を同じくして定年退職を迎えた老提督は彼女たちを不憫に思い、自らの退職金(彼は艦娘達と違い、まがりなりにも海軍大将なので莫大な額をもらっている)を元手に芸能プロダクションを設立し、”元”艦娘たちを再び華やかな世界へ羽ばたかせることを決意する。

「汝、迷える艦娘よ。武器を捨ててマイクをとれ」アイドルマスター/ZERO。始まります!今ならCu:吹雪、Co:響、Pa:夕立の3人のSSR排出率2倍!

おわり

 

 

第36話

都内の繁華街に近いにもかかわらず来客のあまりない新宿支署であるが、この日は来客があった。警察庁の特殊部隊を率いる一條警視である。過去に次元間ワームホールが発生したり巨大生物が出たりする度に顔を合わせた間柄であり、調整課を通さず話せる警察サイドの窓口的存在でもある。

「実は先日事件が起きまして、科特庁さんにも無関係とは言い難い案件ですのでお伝えしておこうと思いまして…」

関係機関同士の横の連携は、現場を与る者にとっては必要不可欠なものである。

「そうでしたか。どのような事件です?」

「先日、警視庁のG5Xチームが不審な強化人間と交戦しました。本格的に武力衝突したわけではありませんが、加賀美警部補と氷川警部の二人がかりでも押されたということで相当な実力者ではないかと推測されます」

二人ともG5X部隊での活動期間は極めて長く、かなりの実力者である。その二人を圧倒する実力となると、もし敵なら相当に苦労が予想される。

私が腕組みをして難しい顔をしていると、一條警視は1枚のDVDを取り出した。

「これは氷川警部機の頭部カメラの映像です。そちらの本庁にも同じ物を送らせていただきます」

早速パソコンで映像の再生を開始する。そこに映っていたものとは—

「…これG5Xですよね。それも現行機じゃなく旧世代のG5X2だ」

現在は警察・自衛隊・科特庁の3機関が共通運用しているG5X3だが、その前身機に相当するG5X2は自衛隊には配備されていなかった。科特庁の機材も警察からレンタルされた数体のみであり、最高傑作と称されるX3に比べるとやや影の薄い機種である。

「正規のX2は現存しません。X3への置換に際して全て廃棄してX3建造の材料にしましたからね。この機材は何者かがデータを持ち出して作ったデッドコピー品ということになります」

一條警視は困ったことになった、と言いたげな表情をしている。仮にデータが盗み出されたとしても、G5Xシリーズは材質が極めて特殊であるため完全にコピーすることは不可能である。ということはここに映っているのは劣化コピーのはずなのだ。

私は科特庁への試験導入に立ち会ったのでG5X2のことはよく覚えている。警察機材特有のブルーメタリックの装甲に赤い複眼式カメラアイ。警察仕様のX3と外見はよく似た機材だった。

だが、映像に映っていた機材は明らかに外観が違う。白い装甲、黄色い複眼式カメラアイ、そして特徴的な黒いマント。そしてベルト周りにはメモリか何かを挿入するのか、意味深なスロットが存在している。

一條警部が帰った後、映像解析を行っていた本庁から連絡が来た。科特庁サイドでも、やはりG5X2の運用記録に該当する機材は無かった。だが本庁の事務職員で、そのX2を見た覚えがあるという人がいたという。

1時間後。本庁から来た「G5X2に見覚えのある人」を迎えた私はちょっと驚いた。立派な三角耳にふさふさの尻尾を持っていたのだ。人間ではく狐娘だったとは…。年のころは茜ちゃんよりもさらに年長で、23歳くらいだろうか。栗色の髪に藤色の瞳は典型的な日本在来型の狐娘の特徴だ。

「こんにちは、本庁広報課主事の杜若と申します」

「単刀直入すぎて失礼は承知ですが、お話いただけますね?」

私の無粋過ぎる質問にも柔和な表情を崩さない杜若嬢。まだ若いのに中々人間が出来ている(いや狐娘が出来ている?)。

「はい。私は物心ついた頃に変な財団に引き取られました。妖怪の力を妖怪メダルを介さずに人間に反映させる研究をしている財団で、私も狭いところに閉じ込められて飼われていました。あの仮面の戦士…たしか門原さんと名乗っていましたが、あの方が来て財団の施設を破壊してくださったのです」

杜若嬢の表情が徐々に硬くなってゆく。思い出したくない記憶なのかもしれない。

「施設は破壊されて私達研究素材は自由になったんですが、財団の連中は私達の体内に時限爆弾を仕込んでいました。私は爆弾が不発で助かりましたが多くの仲間が命を落としました…」

杜若嬢の記憶を解析している私もだんだんと気分が悪くなってきた。研究データを守るための処置なのだろうが、妖怪も亜人も生きている仲間だ。命を何だと思っていやがるんだ…

「その後私は行き倒れていたところを科特庁の職員に保護されました。門原さんがどこへ行ったのかはわかりません。でも間違いなくあのアーマーを身に着けていました」

警察にも協力を依頼し、ようやく門原氏の情報にたどり着いたのはその日の夕方であった。併せて問題の財団についても情報を収集していたので、些か時間がかかりすぎてしまったのである。門原氏は32歳。元々我が庁の前身である科特隊にいたが組織での活動では自由が利かないと退職。財団が新規開発を進めていた強化スーツのテストパイロットに選ばれたということらしい。

問題は財団の方である。表向きは妖怪や亜人向けの薬剤の研究を行う財団だが、裏では危険な実験を多く実施している疑惑がある他、ハッカーを雇って科特庁や自衛隊サイバー攻撃を繰り返していた疑いを持たれている。コイツらがG5X2の研究データをハッキングして、デッドコピーを作っていたのかもしれない。財団自体は科特庁の監査を受ける直前に解散しており、関係者の消息はわかっていない。

私は例によって東京中の思考を閲覧してまわり、とうとう門原氏を発見した。彼の思考から読み取れたものは2つ。財団において爆殺を主導した者への復讐心と、何を以てしても埋められるかわからない喪失感であった。

「あ、門原氏は財団関係者のアジトを知っているようですね。現場に行きましょう。杜若さんもご一緒願います」

私達が到着する少し前。新宿駅にほど近い廃ビルの一角で二人の男が睨み合っていた。片方は灰色の総髪を持つ30代の男、つまり門原氏である。もう一人は陰険そうな目つきをした初老の男。かつて財団の研究主任を務めた、Xと呼ばれる男だ。

「久しいなX…今日こそ因縁を終わりにしよう」

そう言い放つと門原氏はベルトを起動し、1本のメモリを挿入した。俗にエターナルメモリと称されるデバイスで、本来型落ち機のはずのG5X2を最新鋭機並みの性能に引き上げるものだ。

「それは無理だな」

Xは不敵に言い放ち、彼が妖怪達から—妖怪の命と引き換えに—集めてきた錠剤を一気に体内へ流し込んだ。デバイスを介さず、直接力を人体に取り込む薬物。それこそXが追い求めてきたものだったのだ。

両者の攻防は一進一退の状況が続いている。X2は旧式であるため、重火器が装備されていない。そのため改造されたエターナルX2であっても格闘戦が中心になるのだ。一方、Xは河童の甲羅の力を引き出す薬物を使用した。これによって自身の周囲に疑似的に装甲を作り出しているのだ。エターナルX2は徐々に出力が減少し始める。

「エターナルX2、いや門原。口ほどにもないな」

ほくそ笑むX。と、そこへ

「未熟未熟未熟未熟~!!」

と叫びながら完全装甲態の闘鬼が突入してきた。Xの疑似装甲は闘鬼の拳一発で粉々に砕けてしまった。そこへエターナルX2が飛び蹴りを叩き込み、Xに致命的な打撃を与えることに成功した。

「門原さんだっけ?とりあえずコイツ殺すのに協力するから科特庁に戻りませんか?」

呆気にとられた様子の門原氏に話しかける豊之内。

「いや…俺はコイツらの財団から誰一人救えてねえ。今更どの面下げて戻れというのか…」

門原氏はどうあっても戻る気はなさそうだ。

「いえ…門原さん、貴方は私を救ってくれました。それだけはどうか忘れないでください…」

杜若嬢が割って入る。門原氏との再会は7年ぶりくらいだろうか。だが成長した姿であっても、門原氏に思い起こさせることは出来たようだった。私は門原氏の記憶の中の喪失感が、一部ではあるが消えて行くのを確認した。

「ふん…くたばり損ないの狐の化け物か。今度こそ爆発して死ぬがいい」

死の一歩手前にあるXは最後の力で杜若の体内の不発弾を起爆させようとする。だがいくら念じても爆弾は作動しない。

「今時2進法の起爆コードなんてチンパンジーでも解除出来ます。魔法の基礎研究を軽んじましたねえ?」

私は杜若嬢の体内から摘出した爆弾を持って登場する。そして驚愕の表情を見せるXの前で、その爆弾をバラバラに分解してみせた。

「貴様っ!なんという非道n」

スペシウム光線!!!」

Xの声は聴くに堪えなかったので、私は大火力光線でさっさと焼き払ってしまった。

「狐のお嬢ちゃん、すっかりデカくなったな。ずいぶんと美人になったものだ」

目を細める門原さん。しかし私達の「科特庁に戻って」というオファーには応じられないということだった。せっかく手に入れた自由だから、と彼は笑った。今後もエターナルX2として、流浪のヒーロー稼業を続けるつもりだという。私は餞別がわりに、X3のパーツを使用してエターナルX2の装甲や出力を強化して彼に託した。

元をたどればコピー品とはいえ、今や唯一のG5X2である。今後も活躍してほしい。杜若嬢も門原さんに昔の礼を述べている。我々科特庁と彼は手段は違えど、人間と妖怪や亜人の共存という目的は同じである。

支署に戻ると深夜2時を回っていた。上で寝静まっている葵ちゃん達を起こすのも悪いので、私と豊之内は深夜の銭湯へ繰り出していった。

つづく

 

 

雑記39

艦これイベントの度に画像投稿でページ数を水増しする悪いオタク。わしです。糞イベ過ぎて画像すらろくに上げてなかった前回のイベント~イベ前の主な収穫

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↑映画がコケてタナカスが更迭されることを祈る私です。

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突然実装された新潜水艦、伊26。どうしたタナカス?オリョクルをされるのはもはや悔しくなくなったのか?ああ~っとしかもcvは小倉唯だあ!ドロップできなかった提督達の断末魔の悲鳴が聞こえてきます…

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どのイベで入手したか覚えてない春風(たぶん春です)。かわいい…かわいくない?和服にブーツの組み合わせが性的ですね。ブーツの中に射精して春風が半泣きになることろが見たい。

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夏イベで登場の水無月。弥生や卯月と同じ制服に短パン、青髪、青目、ロリ…御無礼、数え役満です(男汁ドバー)

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夏イベの目玉だったイギリス戦艦のウォースパイト。性能はまあまあ、低速な代わりコスパの良さが武器。あと英語が流暢。アイオワの100倍くらい流暢。あとかわいい。

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2-4周回して出した浦波。見た目が地味過ぎて出た瞬間「あっなんだお前!?」(ホリトオル)って感じでした。性能も地味です。

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↑今回の秋イベも案の定クッソつまらないゴミみたいなイベントで憤怒の形相を見せる私です。

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前半戦クリア報酬のフランス産の水母です。デザインはお洒落だけど顔がね…もうちょっと顔がクッキリ濃ければよかったんですけどね。派手に染めた髪の毛に顔が負けちゃってますねえ。

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E-5でボス絶対殺すマンと化した長門。今までの長門バードン戦のゾフィーというかタイラント戦のゾフィーって感じでしたが今回はエンペラ星人戦のゾフィー並みの活躍でした。おお~やればできる!

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クリア報酬はアメリカの空母サラトガでした。あ、おい待てい(江戸っ子)!お前その乳袋は何だ?その腋は?提督のちんぽだけを殺す艦娘かよお!でも本当にエロいのは首に巻かれたスカーフです。雌を感じさせる。あとしずま艦特有の性欲めっちゃ強そうな表情がイイネ!

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E-2で掘り当てた山風。全体的にメンタル弱そうな言動が目立つ。まあ2次元美少女のメンヘラは許せるってそれ一番言われてるから。腋と袖口がエロい。成長したら鈴谷になりそう。

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今回のイベントの目玉、朝風。もう何から何まで性的過ぎてこれはいけない。エロ度でいえば春風とどっこいどっこいでしょう。髪の毛クルクルしたり懐に手を突っ込んだり袴を脱がせたりしたいですね。

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↑朝風でもう滅茶苦茶にシコっている私です。

劇場版はポアだポア!アニメのクソ脚本で叩かれまくったのにその問題の脚本家をそのまま持ってくる謎采配には流石のタナカスも苦笑い。

おわり

 

第35話

今年の東京は秋というものを亡失してしまったらしく、まだ師走の商戦も始まらぬ内に初雪を観測した。朝出勤すると、葵ちゃんがせっせと署内のオフィス機器を立ち上げていた。先日の体調不良の件を私は大いに心配していたが、どうやら葵ちゃんのコンディションはすっかり回復したようだ。

「体調は大丈夫ですか葵ちゃん?」

「はい、おかげさまで」

三角耳をぴょこぴょこと動かしながら答える葵ちゃん。だいぶ表情も明るい。

「あと、簡単な魔法が使えるようになりました。寝込んでる時に発現したみたいです」

葵ちゃんはそう言いながら、私のデスクに置いてあった紙を凍らせてみせた。氷系統の魔法か、どうも新宿支署には集まりやすいのかもしれない。

「おやおや。今度熊谷さんに使い方を教わってみるといいですね。多分手取り足取り熱心に教えてくれると思いますよ」

動物大好き熊谷さんなら狐娘の葵ちゃんにはさぞ熱心に教えたがるだろう。

「ところで坂上くんはどこですか?」

普段ならデスクで一升瓶を転がしている男の姿が見当たらない。まだ実調の命令も出ていないはずだがどこへ行ったというのか。ウロウロと探していると矢吹係長から「坂上は飲みに出かけた」という情報提供があった。朝から開いている飲み屋があるのが悪いのか、それとも朝から飲みに行く奴が悪いのか…私はどうしてもついて来るという葵ちゃんを連れて坂上を探しに出た。

歌舞伎町の一角にある、24時間営業の居酒屋。そこで坂上は4体ばかりの信楽焼のタヌキの置物に囲まれて酒を飲んでいた。声をかける段になって、私はそのタヌキが置物ではなく妖怪であることに気づいた。妖怪化け狸。別に何か悪さをするでもなく、酒場に出没しては酒の飲んでポンポコ騒いでいるだけの陽気な連中だ。

「ん~おいしい!灘の酒が口いっぱいに広がりますぅ!」

酒を飲みながら語るのは眼鏡をかけた恰幅のいい狸の妖怪、たぬ蔵(170歳)。遠目にはタヌキどころか熊に見えなくもない。

「いや~美味い!朝からこんなん飲んでたら頭おかしなるで」

同じく酒を飲みながら語る、顔に不釣り合いなデカいサングラスでキメた狸の妖怪、TANU@GAME(タヌゲーム、132歳)。高田馬場周辺を根城にしており、『戸塚勃起狸』なる蔑称別称で呼ばれている。

「まあいいじゃありませんか飲酒は自由ですから」

そう重々しく述べたのは4体の中で最年長、日本を代表する偉大な狸の妖怪、狸田たぬ作先生(700歳)。室町時代よりも前には楠木正成の陣営に参加していたという伝説の持ち主である。

「フウ~朝から飲酒気持ちいい~!あっお姉さんビールビール!生追加で」

やけにテンションが高いのは全体的に肌が黒く、異様に筋肉質な狸の妖怪、通称タヌウ先輩(114歳)。4体の中では最年少だが何故か先輩と呼ばれている。下北沢地区で妖怪詰云を全滅させた功績を持つパワー系タヌキでもある。

「これはこれは皆さん朝からお揃いで」

私が挨拶をすると、狸の妖怪達は思い思いのタイミングで挨拶を返してきた。全員声が被っていて一つも聞き取れなかった。彼らは私の後ろで緊張している葵ちゃんに気づいて、一斉に腹太鼓を鳴らした。敵対していない妖怪に対する、彼らなりの友好の挨拶である。当の葵ちゃんはびっくりしたのか、私の背中を思い切り摘んだので私は背中に内出血を負った。

「坂上くん、飲みの最中悪いんですが調査業務です。都庁裏に行ってください」

坂上も狸軍団もそのまま店を後にしたため、会計は私が払わされる羽目になった。

新宿高層ビル群の象徴ともいえる東京都庁。その裏に広がる緑地に姿を現したのは醜悪な妖怪、質糟であった。今までの質糟よりもさらに醜悪な姿に変貌し、そのキモオーラでメンヘラ女性たちを次々に失神させていた。そこを運悪く通りかかったのは、岐阜から避難してきていた女子高校生の初海ちゃんだった。

「ゲヘヘヘヘ…俺は前前前世から君のことを求めてたんだよ!」

初海ちゃんににじり寄る質糟。

「いや…気持ち悪すぎ…瀧くん助けて!」

メンヘラではない初海ちゃん、当然の反応を示す。だが彼女と数奇な運命を経て絶賛交際中の瀧少年はその場にはいない。じりじりと迫りくる質糟。危うし初海ちゃん。このままでは精神と肉体をダブルレイ○されてしまう。

「あ、おい待てい」

現場に到着した坂上、サカヅキに変身して質糟に殴りかかる。両者は一進一退の攻防を繰り広げる。素の戦闘能力で上回る坂上が徐々に質糟を圧倒し始めたが、質糟が突然口から茶色い液体を吹いた。それを浴びた盃鬼の装甲の一部が融ける。

「うおっ!何だこいつ」

驚いて飛びすさる盃鬼。調子に乗った質糟はどんどん液体を吹いてくる。液体が初海ちゃんにかかってはいけないので、徐々に盃鬼が劣勢に立たされていく。もはや勝ち(と初海ちゃんへのレ○プ成功)を確信した質糟は小躍りしながら飛びかかろうと体勢を整えている。

「お ま た せ」

そこへ金玉の皮を拡げ凧のように空を飛ぶ、愉快な狸軍団がやってきた。タヌウ先輩とたぬ作先生、そしてたぬ蔵の3体だ。タヌゲームはオフ会をしに板橋のイオンへ行ってしまったということらしい。

ヨガフレイム!」

たぬ作先生が火を噴くと、質糟は舌打ちしながら飛びのいた。

「坂上くん、これを使いなさい。今日の酒代のお礼です」

酒代を払ったのは私だが、その事実を指摘する者はこの場に誰もいない。たぬ作先生は金色に輝くコインのような物を盃鬼に渡した。俗に妖怪メダルとか呼ばれているアイテムである。坂上がそれを武器の法螺貝の中に突っ込むと

「タヌキ!キンタマ!アーマー!タタタタタタヌキンアーマー!」

とよくわからない音声が流れ、盃鬼が金色に輝く装甲を纏ってゆく。盃鬼の、現役の戦鬼としては闘鬼、暁鬼に次ぐ3例目の装甲形態である。質糟はそれを見て再び茶色い液体を吹きつけるが、ワックスを塗った車体にかかった雨粒のようにあっけなく弾かれてしまう。

盃鬼は法螺貝から炎を放つ。今までの火球とは色からして違う。金色に輝く炎が噴射され、それの直撃を受けた質糟は「女…女いねえか…」と断末魔のキモイ叫びを上げながら燃え尽きた。

戦いを見届けたたぬ作先生ら狸軍団の一行は満足げに飛び去って行った。金玉の大風呂敷を拡げて…。初海ちゃんは坂上に礼を言うと、迎えに来た瀧くんと連れ立って帰って行った。

「うい~っす戻りました~」

私と熊谷さんが葵ちゃんの魔法の練習を見守っていると坂上が戻ってきた。「質糟キモすぎしね」と思いっきり雑に書きなぐった紙切れ(坂上はそれを報告書だと主張していたが)を私に押し付け帰ろうとする坂上。

「待ちなさい坂上くん。はいこれ、今月の給料」

私は坂上に給料袋を手渡す。

「あ、ありがとナス!って薄い…薄くない?今月の給料袋」

「今日の飲み代を天引きさせてもらいましたからね」

悪魔か死神を見るような目で私を見る坂上。私は坂上の視線に気づかないフリをして、葵ちゃんの魔法の練習の様子を見ていた。

つづく