まだ観てない人はブラウザバックしてください※5月17日追記あり

『シン・ウルトラマン』の感想です。

 

まあ面白かったんだけど、前作の『シン・ゴジラ』は商業作品としての完成度が高くてゴジラをロクに知らない人にも自信をもって薦められたのに対し、本作は完全にウルトラマン好きな人向けだと思う。ツイッターでは「ウルトラマン知らないしこの作品から入るけど、この作品を基準に語ってもいいんだ」的な主張を散見した。それは全くもって否定する気はないのだが、本当にウルトラマンに関する予備知識なしでコレを見ると「ウルトラマンってよくわからない」となるかもしれない。

事前に公開されていたビジュアルでカラータイマーが無いのが話題になっていたが、成田亨の初期デザイン案に合わせたのと、光の国の住人も数ある高度文明宇宙人の1つにすぎないということの暗示だったのかな?作中では地球に対して無償の善意を注ぐウルトラマンが特殊で、同胞であるゾーフィは地球を滅ぼすことに躊躇が無かったことへの理由付けとしては理解できた。

一方で地球での変身状態には時間的制約があるデメリットは特に解消されていなかったので、カラータイマー外した意味ある?と言われるとう~ん…

出てくる怪獣・宇宙人のチョイスは完全にシナリオありきで選んでいた。ウルトラマンの登場怪獣・宇宙人の人気ランキングをやったとしたらゼットン1位は鉄板だとしても、おそらくメフィラス星人の前にバルタン星人、レッドキングゴモラあたりが割り込んでくることは想像に難くない。まあレッドキングゴモラは純粋な地球生え抜き怪獣なので今作のシナリオには噛み合わないので、出てこないのは仕方ないのだろう。

あとバルタン星人もねえ、今作に出てくると悪役にならないんだよね。ザラブ星人メフィラス星人が自己の欲望から地球の支配を目論んでいるのに対して初代のバルタン星人は難民なので。むしろ「光の国の掟」とやらのために地球人の倫理観では理解できない行動をとるゾーフィよりよっぽど善良な宇宙人になってしまう。

若干否定的なことを言ってしまったが、作中の演出というかパートごとの構成は素晴らしかった。ザラブ星人のパート、メフィラス星人のパート、最後のゼットン戦といずれも初代ウルトラマンのオマージュを随所に取り込みつつ、というか話の流れをほぼ維持したまま庵野の味付けが出ていて本当に面白かった。

ただし、最後のゼットン戦は人間の叡智を結集してウルトラマンを援護しよう!ゼットンを倒せ!という流れではないし(それだと帰ってきたウルトラマンに近くなってしまう)、原作のように人類の生み出した武器でゼットンを倒すわけではないので、クライマックスの盛り上がりはイマイチ。クライマックスに向かって離陸するのではなく坂道を降りていくような作りで、そういう意味では終わった後の余韻では『シン・ゴジラ』には及ばないかも。

ゼットンについては賛否両論見かけたけど、俺はアレは凄く良かったと思う。通常の2足歩行形態のゼットンはハイパーゼットンで割とやり尽くした感があるし、流石の庵野でもアレを上回るのを簡単には出せないと思う。ウルトラマンサーガ、脚本とかは若干アレだしAKBの演技もちょっとアレだけどウルトラマンサーガvsハイパーゼットンは見ごたえがあるのでヒマな人は是非見てほしい。

しかし今作のゼットン、光の国の住民でも倒せないサイズとパワーだけどこれ万が一暴走したり(ベリアルみたいな)悪役に乗っ取られたりしたらどうするんだろう?一度起動してしまったら制御下を離れる的なことをゾーフィが言っていた気がするんだけど、このゼットンに対する抑止力はどうなってるんだろう。この世界にもノアやキングが居るんだろうか?(ノアなら地上からでも光線で容易にゼットンを破壊できます。チート野郎なので)(キングはそもそもゼットンを起動前の状態まで戻せます。チート野郎なので)

今作で一番良かったのは山本耕史メフィラス星人。これはもう100点満点中1万点くらいの出来栄えだった。何から何まで胡散臭い。「本当の悪は自分が悪だという自覚がない」なんて言われるけど、今作のメフィラス星人は完璧。紳士的で、善意を各方向に振り撒き愛想も良い。何なら悪い事をしているとは一切思っていない、「地球人のために純粋に善意でやってあげている」感さえ漂っていた。しかし胡散臭いのだ。徹頭徹尾胡散臭い。凄い俳優だ。

ただ、本家『ウルトラマン』ではザラブ星人メフィラス星人も狡猾で強力だがあくまで侵略者である。ウルトラマンとの関係は善・悪でハッキリ対比しており、今作のような「未知の宇宙人(ウルトラマン含む)と地球人の関係」に比重を置く話ではなかったと思う。そういうテーマはむしろ後続の『ウルトラセブン』の方が扱ってたよね。そういう意味では『シン・ウルトラセブン』で今回みたいなテーマに軸を置いて作ったらより自然だったかもしれない。

禍特隊の描写は最高だった。「ぼくのかんがえた科特隊」「化学特捜庁」と解釈完全一致だったので。自衛隊と連携して任務に当たっている冒頭の描写がとてもよかった。宇宙人とか介入してこない「禍特隊の日常」みたいなスピンオフ作品まあ~だ時間かかりそうっすかねえ~?

それとザラブ星人のパートでウルトラマンが拉致されるシーンがあったのが良かった。ヒーロー凌辱だぜ!

 

以下、2度目の視聴を終えての追記です。

サークルの先輩であるオタクミン先生は本作に関してややシブい評価を下していた。曰く

・『シン・ゴジラ』と比較してクライマックスでの盛り上がりが弱い。

ウルトラマンが変身状態で言葉を発しない。オリジナリティはあるが余白が目立ち戦闘の盛り上がりを欠く。

・監督が庵野ではなく樋口になったせいか、『シン・ゴジラ』で徹底的にオミットした人間ドラマが増えて冗長である。

とのことで、これらの点に関しては私も同意だ。オタクミン先生に限らず、本作を『シン・ゴジラ』に続く円谷×庵野の第2作と捉え、比較対象としているファンからは上記のようなややシブめの評価が付きがちだった。一方でゴジラとは切り離し、単にウルトラマンのリブート作品として見るファンからはおおむね高評価である。原作に対する細かいオマージュ、常にウルトラシリーズ他作品を意識させてくる画作りは、流石ウルトラマンオタクの頂点に立つ男の作品だと思う。

一方で最初の『ウルトラマン』登場から半世紀以上が過ぎ、庵野監督は特撮世界で積み上げられてきた物をこれでもかと突っ込んできた。メフィラスによって作り出された(厳密には元から地球にいたものの改造らしいが)「禍威獣」はパシフィック・リムの「カイジュウ」だし、ゼットンをふっ飛ばした後ウルトラマンが暗黒次元に吸い込まれるのはウルトラマンダイナだし、ゼットンとの最初の戦闘に敗れて病床に伏せる神永隊員はウルトラセブンだ。

そんなわけで1回目の視聴を終えた感想は「ウルトラマンの予備知識がないとよく分からないかもしれない」だったが、2回目を見た今は「単純に令和版『ウルトラマン』として予備知識無しで観ても楽しめる」という風に変更したい。ウルトラマンの予備知識なくても楽しめるので、ウルトラマンよく知らない人も観てほしい(このブログ見に来てる人でウルトラマン知らない奴いねえだろ、というのは置いといて)。

最後ゼットンウルトラマンがβカプセルを掲げて突っ込んで行くシーン観て「うわ世紀末オカルト学院じゃん!庵野すげえとこ拾って来たな!」と思ったのだが残念ながらオカ学は12年前の微妙なアニメだったので、同じ指摘をする人は特に居なかった。

ウルトラマンの知識に自信ニキは是非複数回観てほしい。自分は2回観ただけなのでエラそうなことは言えないが、1回目はストーリーを追うのに夢中で作中の小道具や細かい演出をどうしても見落としがちである。2回目からはそういうものを注意深く探せるので、庵野のような知識量で殴ってくるタイプのオタクが作る映画は複数回観た方が面白いと思う。

あと主題歌が米津玄師で、ウルトラマンにしては随分シャレオツな楽曲を持ってきやがったな~と思ってたけど、歌詞を聞き取っていくと原作へのリスペクト度が高くておお~ええやん、ってなっちゃったあ。

今日映画館に行ったらウルトラ五等分の花嫁劇場版の広告が出ていた。二乃がゼットンに拉致されて腹筋ボコボコにパンチ喰らったり三玖がガッツ星人に捕まって磔にされたり5人揃ってヒッポリト星人にブロンズ像にされたりするのだろうか…やべえよやべえよ…えっクライマックスは花澤・竹達・伊藤・佐倉・水瀬が「宇宙に平和が来るまでは~」とか歌ってくれたりするんですか?うわあ興奮してきたな?

終わり