雑記66

ゴジラ怪獣惑星』を観に行ってきました。3歳で親父に連れられて『ゴジラvsキングギドラ』を観に行ってから26年。毎年ゴジラが劇場公開される度に観てきましたが、今回ほど事前情報でワクワクしないのは初めてかもしれません。

まあでも「所詮は事前情報だけなので、ひょっとしたら良い方向に裏切られるかもしれない」という微粒子レベルの期待を持って観に行ってきました。(ただし、前日に観に行った後輩のホリぞう君から「期待しない方がいいっすよ」と釘を刺されていたので、現実には期待より不安が強かったんですが)

「脚本の虚淵先生だってクリエイターとしての実績はあるんだし、何より去年の『シン・ゴジラ』の後に出してくるんだからよほど自信があるに違いない。アニメより特撮に強い庵野監督、日本最強クラスの円谷英二マニアの庵野監督が潤沢な予算と高いモチベーションで作った、あの『シン・ゴジラ』と張り合おうってんだから」と自分に言い聞かせて劇場へ。

で、観てきたわけですが。良く言えば「虚淵先生のカラーがよく出ていて、虚淵作品らしさがある」、悪く言えば「なんでこれをゴジラとして出そうと思ったの?」ってところですかね。『アルドノア・ゼロ』とかの虚淵作品(まあアレ虚淵先生途中で降りてしまったみたいですけど)の延長として考えると悪くはないのかな?と思いました。

で、以下は個人的に気になった部分を

・会話が長くてわかりづらい、要するに無駄が多い。アルドノアもそうでしたけど、キャラが漫然としゃべってて動きがないんですね。富野作品なんかはキ〇ガイが叫んでるだけでもちゃんと言いたいことが伝わってます。あと会議シーンも「会議のシーンを入れるのが目的」といった感じが出ていてテンポが悪いですね。シンゴジラの会議の見せ方の上手さがよくわかりました。

ゴジラの巨大さが伝わらない。ずっと森の中での戦闘なので仕方ない部分もあるんでしょうが、「史上最大のゴジラ」という触れ込みなのに巨大さが伝わってこないのは非常にマズイ。樹木の描き方であったり、対比物の見せ方次第でもっとインパクトを残せたと思うんですけどね。あと森の書き込みに不満があります。∀ガンダムの森での戦闘シーンと見比べると一目瞭然、森の中での「巨大さ」の表現は作り手の技量が出るのかもしれません。

・怪獣を動かすのが上手くない。庵野監督はその道のプロなので比較すべきではないかもしれませんが、個人的には今回の怪獣のアクションは落第点でしょう。実写よりも巨大な物を動かせるアニメーション作品の強みを活かせていなかったのは残念です。同じ実写→アニメでも『ザ☆ウルトラマン』なんかはバリバリ動くし特撮にはない味が出ていたので、そういうのを期待してました。

・地球に戻ってきてダメそうってなった時に「月面に住む」と言い出した所。

「月面住めるんかいっ!」

ってなりましたね映画館で。なんで地球から逃げ出した時に最初から月面に行かなかったのか?危険を伴う亜光速でのワープをやったり、老人を明らかに人が住めない星に移民させて死なせたりする必要がどこにあったのか?最初から月へ退避しておけば、地球から資源を持ってくることもできたし、もっと多くの人が助かってたんじゃないですかね…ゆくゆくはフォンブラウンやゲンガナム等の月面都市が出来、月面の下には人工の運河が巡らされ、女王ディアナ=ソレルの下で平和に暮らしていけたんじゃないですかね…

作中に「なぜ最初月面に行けなかったのか」の説明が一切無かったんですが、もし月への移住を失念していたのなら無能を通り越してヤバい何かですね。

・もう少し丁寧に作り込めなかったのか?

前述の森の描写もそうですが、製作スタッフの実力を考えればもっと細部まで作り込めたと思うんですよね。最初の怪獣総進撃の部分は紙芝居でしたし、ゴジラもCGで見せるなら特撮で出来ない動きが見せられたはずです。あとは爆弾投下のシーン、着弾の瞬間を今までのアニメ同様に漫然と描写しているのが惜しまれる。シン・ゴジラを思い返してみてください。ゴジラの表皮でバウンドする爆弾。ゴジラの眼に映り込む着弾の瞬間。そして爆発。よろめく街並み。アニメゴジラのスタッフを悪く言いたくはないんですが、こういう作り込みの出来る・出来ないが庵野監督との「格の違い」と言わざるをえません。

・最初から3部作ありきの尻切れトンボ。一緒に観に行った先輩曰く「この映画はどこをクライマックスとして見せたかったのか、主張が伝わってこない」とのことでしたが、たしかに私もイマイチそこを掴みきれませんでした。ゴジラと人類の死闘を見せたかったのか?炎の中に崩れる怪獣を見せたかったのか?最後の真打ち登場が一番大事だったのか?伝わってきませんでした。作り込みが甘いのも会話が長くてダレ場が多いのも、最初から3部作にするための引き延ばしと取られても仕方のないレベルです。

あんまり書くとネタバレになるんでこの辺で。騙されたと思って観てみてください。まあ3部作なんだけどね。同期のそんし君は「どうせゴジラなんて無理なんだから萌えアニメをやれ」っと言っていました。キモオタクはこれ3本に金払うくらいなら、ごちうさ劇場版でも観に行けばいいと思います。

アニメ作品が実写化されるとキレるオタクが大勢いますが、今回の作品はその逆パターンだと思いました。ゴジラという原作を使って、アニメ界のビッグネームが自分のやりたいことを好きにやる。売れている声優を起用する。アニメオタクにはウケるかもしれませんが、熱心なゴジラオタクはキレるかもしれません。私は理性的なのでキレませんでしたが。

ううう君「えっ?続くの?」

ぼく「そりゃあ生き物だからな」

おわり