第33話

秋も終わりが近づき、我らが新宿支署でもようやく暖房の運転が始まった。国からは節電方針などというバカげたお触れが出ており、暖房も必要最小限の運転をするように、とのことだったが米長コマンダーの「うるせえ」の一言で普通に暖房運転できるようになった。

デスクに座ると何だかいつもと違っていた。暖房は普通に運転されているが、なにやら足元が暖かい。葵ちゃんが潜り込んでいるのかと思ったが、彼女はコーヒーを盆に載せてこちらへ歩いてきている。

「おはようございます、島畑先生」

挨拶の主は一之江さんだったが、彼女は杖を振って何やら魔法を展開している。どうやら暖房の温風(部屋の上部に溜まる)を下へ降ろす練習をしていたようだ。

「おはようございます。練習ですか?」

「気流の操作です。実調の場に出るまでに制御できるレベルにしておくようにと矢吹係長に言われました」

一之江さんは風系統の魔法を使う。一之江家は魔法の総合商社と言われた名門だったのだが、今は彼女の実家を含め傍流が残っているだけである。彼女の父は風魔法の名手であり、紛争時に中立を宣言して表舞台を退き現在は魔法学校の教師をしている。私も会ったことがあるが、突然変異的な善人と言われたほど温厚な人物であった。

「アリスちゃん、今日は貴方と私が実調です。準備して」

神木田さんの呼びかけに同時に反応する一之江さんと鹿島さん。神木田さんはバツの悪そうな表情を浮かべ、鹿島さんの方を手招きで呼び寄せた。ちなみに二人は学校でどう呼び分けられていたのか後で詩織ちゃんに聞いたところ「イッチーとカッシー」だったらしい。ネッシーの親戚かな?

実調場所は化け物頻出地として毎度おなじみの戸山公園であった。もう秋も終盤、流石に寒風吹きすさぶ中で愛をささやき合うバカップルも飲み会に興じるバカ学生もいなかった。『箱根山』と称される小高い丘を登る二人。眼下では子供たちがサッカーに興じている。

「今回は何が出たんですか?詰云ではないんですか?」

不安気な鹿島さん。神木田さんも魔法師としては駆け出しである。

「なんかガス状の化け物ですって。茶色いガス状の…あっ!」

答えながら前を歩いていた神木田さん、さっそくそれを発見した。報告と異なっていたのは、金属質のドラム缶のような殻に入っていたことだ。ちょうどヤドカリのように。

「とりあえず燃やす!」

神木田さんは叫ぶと杖を左手で振り上げる。温度の高い青い炎が標的を包み込む。およそ2~3分ほど青い炎を浴びせ続けた神木田さん。しかしドラム缶のような殻は表面に少し煤が付着した程度であった。今度は少し温度の低い、オレンジ色の炎を多方向から同時に浴びせる神木田さん。殻は熱を受けて若干膨れたようにも見えるが、中のガス状の怪物は特にダメージを受けた様子はない。

「硬いわね…」

やや困惑した様子の神木田さん。鹿島さんはちょっと泣きそうな顔をしている。

「か、神木田さんどうしましょう?本部から応援呼びますか?」

「いや、私に考えがあるわ。指示に従ってちょうだい」

怪物に悟られないよう、指示をヒソヒソと耳打ちする神木田さん。鹿島さんが指示を受けて少し離れると、ガス状の怪物はそちらの方向へ追尾しようと殻から出てくる。

「させない!」

神木田さんが炎を打ち込むが、怪物は炎が到達する前に殻に戻ってしまう。神木田さんはそれでも構わず炎で延々と殻を炙り続ける。炎の色がオレンジから青に変わるが、やはり殻は微動だにしない。神木田さんの魔法力が不足してきたのか、再び炎がオレンジ色に変化し始める。

「今よ!」

神木田さんはそう叫ぶと突然炎を止めた。と同時に鹿島さんが杖を思い切り振った。すると怪物の直下から冷水が勢いよく噴き上がる。冷や水を勢いよくぶっかけられ、殻はベコッバキッと大きな音を立ててひしゃげた。ガス状の怪物は中から泡を食ったように飛び出してくる。

「逃がさない~!」

神木田さん、残された魔力を全て注ぎ込んだ青い炎をガス状の怪物に向けて放つ。逃げ場も隠れ家も失った怪物は超高温の炎の直撃をくらい、景気よく燃え上がった。周囲に栗の花のような強烈な臭いが立ち込める。

「「うっ、くさい…」」

二人とも思わずハンカチを口に当ててうずくまってしまった。ガス状の怪物は栗の花の匂いを公園中にまき散らして消滅した。鹿島さんにとっては初めての実調であったが、どうにか無事に終了した。ハンカチで口を押えて涙目になっている彼女にその実感があるかどうかはわからないが。

私は庁舎に戻ってきた二人から報告書を受け取り、目を通す。

「なるほど膨張係数の違いを利用して殻を壊したわけですか。考えましたね」

神木田さんに称賛の言葉をかけると、彼女は少し照れた様子であった。鹿島さんは臭いによるダメージからようやく立ち直ったらしく、照れた様子の神木田さんを見つめていた。

「ところでお茶にしませんか?洲本さんが京都の方からお茶請けを取り寄せたそうですので」

「へえ、羊羹とかですか?それとも八つ橋?味付き金平糖なら最高ですね」

顔を輝かせる鹿島さん。

「栗ですよ。なんでも有名な店の焼き栗きんとんだそうで…」

「「栗はもうイヤーっ!」」

神木田さんと鹿島さんの声が見事にハモった。仕方がないので私は寒風の中おはぎを買いに行った。

つづく

雑記37

ブログに限らず、上手い人ほど作品を公開したがらないの何なんでしょうね。「100点満点の作品しか人様に見せられない症候群」にかかってませんか?私は自己採点で赤点じゃなければとりあえず公開しちゃいます。ブログの更新頻度が遅い人は自己採点が厳しすぎるのでわ?忙しくて書けないだけか…

今書いてるSS(というカテゴリに入れて良いのか?)もいつの間にか30本くらい書いたので、最初の方のとか途中の思いつきで適当に書いたやつとかをキチンと体裁を整えて書き直したい気持ちがあります。多分ブログで公開はしないで文書ファイルか何かにしてパソコンの中に封印しますけど。今使ってるPCにワード入ってませんけど…

宮城県にキツネ専門の公園があるというのをテレビで観ました。宮城蔵王キツネ村…気になりますねえ。ホンドギツネ・キタキツネ・ギンギツネにホッキョクギツネがいるそうです。エキノコックス対策として全て自家繁殖させた狐を飼育しているらしいです。自家繁殖なので人懐こい個体が多いとか。行きてえなあ…

狐娘にめちゃくちゃ精液搾り取られたい、みたいなことを考えていたのですが、狐娘にも色々な系統とか家系があると思うので、今回はその話を少し。

昔話に出てくる九尾の狐、玉藻前の血を引く家系が那須家。玉藻は元来インドからアジア諸国を経由しているのでベンガルギツネの特徴を引いていると思われます。したがって金髪、金色の瞳を持っている。南方系なので三角耳は大きく、陰耳は小さくなります。巨乳が多そう。

日本在来種は稲荷信仰の盛んな地域に多いでしょう。関東では穴守家(東京)と笠間家(茨城)、愛知の豊川家、京都の伏見家、大阪の玉造家など+各地に土着の一族がいる感じかと思います。本土ギツネの特徴を引いて全体的に細身で華奢になる傾向が強く、茶髪か赤毛に黒~茶色系の瞳を持っている。あまり巨乳にならない。

北海道では日本在来の狐娘とほぼ同じ容姿ですが、キタキツネの特徴を引いているので三角耳が黒くなるのが特徴です。あと尻尾は全狐娘の中で最もフッサフサでしょうね。アイヌ社会と融和してひっそりと暮らしてそう。

明治以降になると海外からも流入があったはずです。中でも北米の銀狐の特徴を引く血統と北欧のホッキョクギツネ系統は容姿の多様性をもたらしたと推測されます。北米系は銀髪と青系の瞳が特徴で、北欧系は銀~白色の髪を持ち、三角耳が小さいのが特徴ということになるでしょう。

作中でたびたび出してる姉妹のうち、葵は青みを帯びた銀髪と空色の眼を有しているので、恐らく北米系の血を引いているものと思われます。じゃあ何故姉の方は赤みのある茶髪に茶色の瞳の日本在来種の特徴を持っているのか?

設定で狐娘は人間の男と交尾をして子孫を残すので、系統の違う狐娘同士が交わるはずはありません。狐娘の卵子のX染色体と人間の精子のX染色体で遺伝子情報が形成されるはずなので、普通に考えれば他の血統の遺伝子情報は入ってこないわけです。

でもそこは半人半妖の狐娘、過去に絶滅の危機に瀕した際に手に入れた能力があってもおかしくないでしょう。私が考えるに、人間の男の個体数が極端に減少した時に、狐娘たちは滅亡のリスクを避けるため一時的にふたなり化した個体が存在したのではないでしょうか?野生生物でも一時的に性転換する種は実在するので、半人半妖ならふたなりくらいはお手の物でしょう。

ふたなりが固定化しないのは、多分人間と交雑した方が障害や遺伝子異常が出にくいとかそういう理由なんじゃないですかね(適当)。なので人間の男が減る→ふたなり個体が出現→人間の男が増える→ふたなり個体が出現しなくなる、みたいなサイクルを経ているんだと思います。

茜と葵の姉妹の祖先も、多分日本在来種の血統だったのでしょう。彼女たちの3世代くらい前に太平洋戦争で人間の男の生息数が激減し、滅亡防止の為にふたなり化する者が出現したのでしょう。その時に北米系の狐娘と交尾して生まれたのが彼女たち姉妹の祖母だったので、妹の方は隔世遺伝で銀髪と青目になった、ということでどうでしょう?

さっきから何の話をしてるんですかねコイツは…キモッ!

おわり

 

 

第32話

私が出張で横浜へ出向いていた所に電話が入ったのは、ちょうど用件を済ませて帰ろうとしている時であった。電話の主は一之江さんであった。番号教えたことあったかな?と思ったが、マメな性格の神木田さんがデスクに電話番号のメモを貼っていたことを思い出した。恐らくアレを見たのだろう。

「どうか、しましたか?」

トイレのパイプでも詰まったかな?と軽い気持ちで電話に出る私。

「庁舎の周りが詰云だらけなんです~。早く戻ってきてください…」

電話機ごしでも一之江さんの声が震えているのがハッキリわかった。今日は私と秋山・豊之内の両係長は横浜へ出張。新城係長は有給休暇で不在、矢吹係長は熊谷さん・宮前姉と実調、スギウラさんは神木田さんとホリ隊員を連れて実調、白崎さんと島村さんは洲本さんと実調に、坂上と宮前妹は研修で本庁に出払っており、庁舎には鹿島さんと一之江さんしか戦力になる者はいなかった。

狐娘の姉妹茜ちゃんと葵ちゃん、それに犬娘の陽ちゃんはいるが、そもそもこの娘達は戦力にならない。

「詰云は何匹くらいいますか?コマンダーには連絡しましたね?」

私は彼女を落ち着かせようと、つとめて冷静に聞こえるように質問をゆっくりと投げかける。

「多分20匹くらいです。先日宮前先輩が見た、燃える詰云もいます。米長課長は今高田馬場駅なのでもうすぐ来られると思います」

泣き出しそうな声で答える一之江さん。

「あ、じゃあ大丈夫です。戸締りをきちんとして、鹿島さんと離れないようにデスクの周りで待機してください。葵ちゃん達には自室から出ないように言ってください」

米長コマンダーが来れば全く問題はない。とりあえず最低限の自衛だけをするよう指示を出し、私と豊之内は秋山係長の車に乗り込んだ。戻ったら支署がウンコまみれになっていなければ良いが…

「うおっ!なんじゃこりゃ!?」

米長コマンダーも、予想だにしない詰云の多さに驚いている。詰云インフェルノが煙と悪臭をまき散らしながら向かって来るのを見て、米長コマンダーは十手を構える。

十手と言っても、米長さんのそれは時代劇に出てくるものとはだいぶ異なっている。全長は80センチ以上あり、純銀と隕鉄を軸とした特殊な合金でできている。核にはウルトラの星と同じく特殊な宇宙鉱石『獅子の瞳』が使われている。しなりを活かして打撃武器としても、相手に突き刺す武器としても使用可能である。

「終わりっ!閉廷!君もう帰っていいよ」

米長さんは叫びながら光線を放ち、詰云インフェルノをバラバラにした。焼いてダメなら砕けばいいのである。とはいえ今回は数が多い。砕けた詰云インフェルノの後ろから別の個体がワラワラと迫ってくる。

「チッきりがねえな…」

米長さんは懐からカードのようなものを取り出す。それにはG5Xを意匠化したようなイラストが描かれていた。それを米長さんが十手の先に突き刺すと。十手を持つ右腕がG5Xのアーマーに、十手が自動小銃に変化した。そしていつもの轟音が鳴り響き、複数体の詰云がまとめて消滅した。

トレース魔法。米長さんの固有魔法である。彼がカードに描いた物を再現し、自分の力として利用できる魔法。一見きわめて強力だが絵の再現度が高くなければ全く役に立たないこともあり、かつて漫画家を志していた米長さんでなければ一線級の能力として使いこなすことは不可能だっただろう。

詰云の群れを倒した米長さんが振り返ると、別の詰云がまさに新宿支署のガラス戸を破ろうとしている所であった。自動小銃で撃てば内部にまで被害を及ぼしかねない。

クロックアップの時間だオラア!」

米長さんのトレースは、素材が実在していなければならないわけではない。次に彼が取り出したカードは2枚。片方には人気漫画に登場する幽波紋のイラストが、もう片方には宮前さん(姉)のイラストが描かれていた。そのカードを2枚同時に十手に突き刺す米長さん。

次の瞬間、米長さんの周囲の物すべてが静止した。その中を十手に高圧の電気を帯電させながら、悠然と歩む米長さん。ガラス戸を破らんとしていた詰云の前まで行き、帯電した十手で軽く小突く。静止が解け、全てが動き出すと、詰云は一瞬で黒焦げになり吹き飛ばされた。

私達が新宿支署に着いた時には問題は一切解決していた。結局実調組や研修組が戻ってくるのを待つことなく、大量の詰云軍団は米長コマンダーによって一掃されてしまっていたのだ。建物内で震えながら様子を見ていた一之江さんと鹿島さんも呆気に取られている。

コマンダー、お疲れ様でした。また派手にやりましたね」

私は出張土産の焼売を渡しながら周囲を見渡す。実調から戻ってきた白崎さんが詰云の残骸からどんどん草を生やして痕跡を消しているが、まだまだ周囲には詰云の残骸が転がっている。島村さんは鹿島さんに効率の良い散水魔法の使い方を教えている。

「まあ手加減ってのは逆に高度な技術が要るからなあ。もうちょっと余裕がある時ならもっときれいに戦えたんだが…」

と米長コマンダー。実戦は恐らく3年ぶりくらいである。

「それより久々に全力で行ったから腹減っちまったよ。焼売食おうぜ」

と米長コマンダーから提案を受け、後片付けに奔走していた面々もぞろぞろと庁舎内に戻っていった。私がお土産にチョイスしたジェット焼売は、匂いがすさまじくフロア内は2日間くらい焼売くさくなってしまった。

つづく

第31話

今年に入ってから急激に個体数が増加した妖怪、詰云。その発生のメカニズムは、実はまだよくわかっていない。当初は人間の女性が変異しているという物騒な説もあったのだが、失踪した人間女性よりも詰云発生数の方が明らかに多いので現在この説は否定されている。女性の怨念が実体化しているという説もあるが、これも決め手に欠ける説でしかない。昔は月に1体出るか出ないかだったのだが、今や新宿支署管内でさえ毎日のように出現報告が上がってくる。

「どっかに詰云の製造プラントでもあるんじゃねえの?」

米長コマンダーが冗談めかして笑う。

「冗談を言っている場合ではありません。今日も西早稲田地区で詰云の発生報告が来ています。今洲本さんと白崎さんに現場へ向かってもらっています」

私は書類を片手に報告する。詰云大量発生のメリットといえば、若手職員に実戦経験を多く積ませられることくらいだろうか。しかし詰云が臭過ぎるため、皆職場に戻ってくる際に消臭スプレーをダバダバと使うため署内がスプレー臭い。ウ○コ臭いよりはマシなのだろうが、もう少し改善したい所である。

などと考え事をしているとまたファックスが来た。もう勘弁してくれ…

「高円寺で異臭騒ぎが発生したそうです。また詰云の可能性が高いから人員を派遣してほしい、とのことです」

私はFAXを読み上げながら若干呆れていたが、ただ呆れているわけにもいかないので人員を派遣することにした。デスクを見渡すと宮前姉妹と熊谷さんがいたので、その3人を派遣することに決めた。

「お姉様と一緒に仕事するの初めてですね!お姉様の日本一美しい氷雪魔法を見せてください!」

張り切っている詩織ちゃん。熊谷さんは容姿もさることながら性格の明るさもあり、また美しい氷雪魔法の使い手であることから、同性の年少者からは絶大な人気がある。それでも「お姉様」と呼んでいるのは、熊谷さんの10年来の相棒の妹である詩織ちゃんしかいないのだが。

「詩織、あなたは実習生なんだから迷惑をかけないようにしなさい。はしゃぎ過ぎないこと」

宮前さんは妹の首根っこを掴んで言い聞かせる。熊谷さんが「お姉様」で自分が「お姉ちゃん」であることに、宮前さんはイマイチ納得していないらしかった。

「い、いじわるをしてはいけない…」

詩織ちゃんは首根っこを掴まれたままジタバタしていた。

高円寺駅前はちょっと洒落にならない状況に陥っていた。気分が悪くなってその場に座り込む人、我慢できず吐く人、タクシーを拾って大急ぎでその場を離脱する人などがあり、現場はかなり混乱していた。単なる異臭騒ぎにしては被害が大きい。本当に詰云の仕業なのだろうか、と現場に着いた3人は首をかしげている。

「あ、アイツじゃない?」

宮前さんが異臭騒ぎの元凶を発見した。姿形は詰云そのものだが、異様なのは詰云の身体の所々から火の手が上がっていたことである。ちょうど香炉のように、煙に乗って悪臭が拡散されていたのだ。

「私、やってみます!」

詩織ちゃんはそう言うと杖を振り、冷凍光線を詰云に向けて放つ。最初は表面がうっすらと凍ったように見えたが、詰云は炎を巡らせて氷結を取り除いてしまった。どうやら炎の勢いを自らの意思で制御しているようだ。

「詩織ちゃん、ちょっと代わってもらえる?」

熊谷さんはそう言いながら刀を抜いた。詩織ちゃんのそれとは比較にならない程に洗練された挙動で冷凍光線を放つ熊谷さん。詰云は先ほどとは違い身体全体が凍ったように見える。流石ですお姉様、とはしゃぐ詩織ちゃん。

だがそこに、もう一体のバーニング詰云(仮称)が現れ、凍った詰云を炙り始めた。ほんの数秒で氷漬けの詰云は復活し、ブスブスと火の手を上げる。ならばと二体の バーニング詰云に冷凍光線を放つ熊谷さん。しかしそこへ3体目のバーニング詰云が現れた。流石に3体の、火力十分の詰云を相手にするのは熊谷さんでも難しかった。宮前さんが放電で筋肉系統の破壊を試みたが、燃えている状態の詰云には効果がなかた。じわじわと後退していく3人。

「私が一匹相手にしますから、お姉様は2匹相手に集中してください」

詩織ちゃんはそう叫ぶと、二人の制止も聞かず詰云の一匹に突っ込んでゆく。しかしただでさえ魔法師として未熟な彼女が、相性最悪の相手に対して勝てるはずもない。悪臭と高熱でじわじわと追い詰められていく。最早詰云との距離は1メートルもなくなり、彼女は覚悟を決めて目を閉じた。

「こら詩織、妹のくせにお姉様より先に死のうなんて生意気過ぎるわよ」

電撃で詰云を弾き飛ばした宮前さん、詩織ちゃんと詰云の間に割って入る。

「お姉ちゃん…」

宮前さんの背中にピッタリとくっつく詩織ちゃん。

状況は全く以て最悪だった。熊谷さんも既に魔力を使い切っており、3人して壁際に追い込まれていた。スクラムを組んで徐々に距離を詰めてくる詰云軍団。その時、物凄い轟音が鳴り響き、3人は耳を塞いでしゃがみ込んだ。

轟音が鳴りやんだ時、詰云は跡形もなく砕け散っていた。

「いや~遅くなりました。皆さんご無事です?」

イマイチ緊張感のない声で確認するホリ隊員。先刻の轟音は、G5Xユニットの自動小銃を発砲した音であった。元々小型の怪獣との戦闘を想定した装備品である。詰云くらいならものの2~3秒で完全に解体可能である。目の前の危機が唐突に消滅し、安堵した3人はその場にへたり込んだ。

ホリ隊員に連れられて戻ってきた3人のために食事を用意しておいたのだが、流石に詰云の臭いをイヤというほど嗅がされた3人は首を激しく左右に振って受け取りを拒否して風呂場へ去ってしまった。

「例の燃える詰云の名称はどうしましょう?本庁からは仮称としてバーニング詰云と伝達されていますが。あ、私はシンプルにファイヤー詰云で良いかと思います」

「詰云インフェルノにしよう」

米長コマンダーの鶴の一声で、燃え上がる詰云の名称が決定した。それにしても、詰云が短期間で急激に進化しているのは一体何故なのか?詰云が今年に入って大量発生しているのは何故なのか?どこから湧いて出るのか?謎は残念ながら何一つ解明されていない。

「近いうちに大規模な実調でもやりましょうかね…」

とは言ったものの、私はこの時点ではそれほど深刻に考えていたわけではなかった。

つづく

 おまけ?ログインボーナス?

科特庁組織図

・科特庁長官

 ・副長官(科学部門)

  ・装備部長

   ・装備開発課長

   ・資材管理課長

  ・宇宙部長

   ・宇宙観測隊長

   ・宇宙資源研究課長

  ・防衛部長

   ・航空宇宙技官学校長

   ・巨大生物研究局長

   ・巨大生物対策課長

   ・関連機関調整課長

  ・超能力対策部長

   ・ESP研究所長

   ・超能力者監理課長

   ・超能力犯罪対策課長

  ・亜人部長

   ・亜人戸籍課長

   ・亜人保護課長

 ・副長官(非科学部門)

  ・特殊職員部長

   ・陰陽課長

   ・戦鬼課長

   ・退魔師課長

  ・魔法魔術管理部長

   ・魔法科教育課長

   ・魔法科教育委員長

   ・魔法師管理課長

   ・魔術師課長

  ・魔法魔術研究部長

   ・魔法科大学校長

   ・戦略魔法研究所長

   ・魔法史研究所長

 ・副長官(総務部門1)

  ・北海道方面本部長

  ・東北方面本部長

  ・関東方面本部長

  ・首都方面本部長←新宿支署はココの管轄

  ・甲信越方面本部長

  ・東海方面本部長

  ・北陸方面本部長

  ・関西方面本部長

  ・中国方面本部長

  ・四国方面本部長

  ・九州方面本部長

  ・琉球局長

 ・副長官(総務部門2)

  ・経理部長

  ・監理部長

  ・監査部長

  ・広報部長

   ・広聴課長

   ・広報課長

  ・人事部長

   ・採用室長

   ・人材育成課長

   ・人事戦略課長

雑記36

36…普通だなっ!

この間、久しぶりに弟とキャッチボールをしに行ったのですが、ブランクが長すぎてボロボロでした。カーブはすっぽ抜けてとんでもない方向に飛んでいくしスクリューは引っかけてだいぶ手前でワンバウンド。フォークは辛うじて相手の取れるところに行くものの変化せず単なる棒球に。腕の振りを直す必要がありそうです。

真っ直ぐも威力が全く出ない糞ボールでした。やはり久しぶりすぎて「どの程度の力で腕を振ればいいのか」がまったくわからない状況でした。強く振りすぎて肩の筋肉痛めるのが怖いんですよね。今後もキャッチボールに付き合ってくれる人を募集していく。

軟式ボールが使い込んだ球しかなくて縫い目が低かったのも良くなかったんですよね。うまく指がかからなくて抑えが効かない。新しいボールを買おうと思いました。

職場の飲み会ってけっこう辛くないすか?サークル仲間や高校時代の友人と飲むのとはわけが違いますから、常に社会人としての仮面を顔に貼り付けておかなければなりません。飲み会も仕事の内とはよく言ったものですが、それなら超過勤務手当をくれ。

この間は23区合同研修のグループ飲み会とやらに誘われたので行ってきました。もはや職場の飲み会ですらねえ…。

その時に「あなたは○○区の○○さん。あなたは××区の××君」ってな感じで来てたメンバー全員の所属と名前を言ったら驚かれたんですけど、普通4~5人くらいの所属と名前くらい覚えません?それともアレか、私がそういうのに興味ない奴だと思われてたのか?残念ながら私は一度見たものはある程度頭に入ってしまうタイプです。腐っても学者の子なので。

隣の自治体の職員の女の子は、出身中学が私の母が昔勤めていた中学校の隣の中学でした。それどころか岬ちゃんと同じ中学校でした。学年こそ違いましたが彼女は岬ちゃんのことを覚えていました。世間は狭いものですねえ。というか後で岬ちゃんに聞いたら彼女の兄は岬ちゃんのクラスメイトだったそうです。こわっ…

先週は久しぶりにしょかさんに会いました。しかしファミレスの座席が微妙な感じだったのであまり話が出来なかったのが惜しまれます。後輩の大学院生A君は期限付きながら助手に採用されたそうです。めでたしめでたし。これからもカスみたいな教授のクソみたいなハラスメントに負けず頑張ってほしい。

飲み会の場で「君の名は。観ましたか?」って聞かれるの、今年の一種の社交辞令になってるんですね。私も聞かれたので「彗星をウルトラ兄弟が光線で破壊するシーンで流れた『ウルトラ6兄弟』のアレンジが良かったです」「最後に糸守を直撃しそうになった隕石を前に郷隊員が変身ポーズをとって変身するシーンに感動しました」「やはりウルトラマンノアは神」など当たりさわりのない感想を述べておきました。

君の名は。』の感想なんか聞かれても、私としては「新海先生は今回は頑張ったんじゃないですか」くらいしか言うことがないわけですよ。せめて『シン・ゴジラ』の感想を聞いてくれればゴジラオタク歴25年のキャリアを活かしていくらでも喋れたんですけどねえ。

最近のアニメは主人公が強いから問題なのではなく、敵が無能すぎるのが問題だってそれ一番言われてるから。異世界ものなんて主人公も大して有能じゃないのに敵がプレミアムガイジだから万能主人公ものよりつまらないんですよね。

おわり

第30話

先日のガサ入れの時に、私はうっかり杖を破損させてしまっていた。榎谷と魔法の撃ち合いになった際のオーバーワークが原因だろうか?修復で何とかなると思っていたのだが、魔法用具に詳しい宮前さんに見せたら「中が折れてるので無理です。買いなおしてください」とバッサリであった。何のためのカーボン杖なんだ…と私は若干悲しい気持ちになった。

「島畑先生の杖の核は何が入ってるんですか?」

魔法使いの杖は材質とは別に特殊な核が入っているのである。興味深々といった様子の詩織ちゃん。私は主査時代に魔法学校の初等科で非常勤講師をやっていたので、詩織ちゃんは一応教え子だったりする。

「核はケルベロスのチ○コの骨ですね。材質はカーボンです」

ケルベロスは犬系の怪物なので、当然陰茎に骨があるのだ。それを聞いていた島村さんと鹿島さんは顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。

ちなみに杖の核は人気の銘柄とそうでないものがある。魔法師に人気なのは不死鳥の尾羽だったり龍の髭だったり、変わった所ではクラーケンのカラストンビ(嘴)なんかも水系統の魔法を使う人には好まれる。植物魔法を使う白崎さんの杖の核は世界樹の維管束である。ちなみに不死鳥の尾羽はけっこう流通量が多く、炎魔法の使い手の杖は大抵これを核にしているが、似た種類の鳳凰の尾羽は稀少であり、価格は100倍くらい違うらしい。ケルベロスのおち○ぽの骨はあまり人気がないのでかなり安い。

「そんなわけで新しい杖を作ってきました」

翌日、私は新しい杖を受け取ってから出勤した。材質は先代と同じカーボン、長さは40インチ(約102センチ)と従来のものよりも相当長くなった。やはり16インチではカーボンのしなりを活かしきれなかったのである。核には宇宙鉱石『ウルトラの星』を削り出した物を採用した。先日の銀色の巨人の一件の際、早田教授から(事実上の口止め料として)もらったものである。これで光線魔法の威力が向上するだろう。

自席で新しい杖をビュンビュン振り回しているところへ本庁からファックスが送られて来た。そのFAXを読むために私が手を止めたので、それまで近寄れずにいた葵ちゃんはすかさず私の膝の上に乗ってきた。

「吸血鬼…吸血鬼ですか。今時の吸血鬼がトラブルを起こすとは思えませんがねえ…」

葵ちゃんを膝の上に乗せたまま私は呟いた。葵ちゃんも首をかしげている。現在、科特庁の戸籍課に登録されている吸血鬼は9つの家系とルーマニアからの帰化者を合わせて111世帯165人いる。大多数は定職に就いており、また人に害のない安全な吸血方法が確立されているため、吸血鬼とヒトのトラブルは最近ではほとんど発生していない。

「とりあえず支署にお越しいただきましょうかね」

私は秋山係長とホリ隊員、そして坂上に実調の指示を出した。庭では鹿島さんが陽ちゃんとフリスビーで遊んでいた。よく見ると鹿島さんが投げていたのは白崎さんが育てていたクソデカ蓮の葉だった。私は白崎さんが怒るのでは、と心配していたが、優しい白崎さんは二人が遊んでいるのをニコニコしながら見ていた。

「詩織!冷蔵庫に入れといた私のヨーグルト食べたでしょ!」

宮前さんが詩織ちゃんを追いかけている。

「蓋に『宮前』としか書いてなかったから私のだと思ったんだもん!」

詩織ちゃん、逃げながら反論する。この姉妹は仲が良すぎるのでいつもこんな感じである。宮前さんも別に本気で怒っているわけではないので、大抵1時間もするとうやむやになっている。

で、1時間が経過し宮前姉妹の痴話喧嘩がうやむやになった頃に秋山係長らが問題の吸血鬼を連れてきた。戸籍で確認したところ年齢は22歳。軽くウェーブの利いた黒髪と、吸血鬼に特有のルビーを思わせる紅い瞳が特徴的な女性だ。名を黒羽朱里と言い、黒羽家の中では傍流の家の娘であった。

「あなたが通った後通行人がバタバタ倒れていったという報告が来ています。吸血によるものですか?」

私は思考の読み取りに集中しているので、聴聞は洲本さんに一任した。

「いや、違うんです!誤解ですよ」

やや慌てたように身振り手振りを交えて反論する黒羽嬢。どうやら嘘はついていないようである。

「アレは私の体質が原因なんです。先祖にサキュバスがいるんですけど、その性質の一部が隔世遺伝してしまったみたいで」

その話は私も非常に興味がある。吸血鬼とサキュバスの混血が可能だったのか。まあヨーロッパに渡った狐娘の中には狼男と結婚して子供を設けた例もあるし、鬼と雪女が結婚して家庭を築いた例もあるので、亜人系同士なら遺伝子は意外と融通がきくのかもしれない。

「私は吸血しなくても普通の食事で生きられるんですけど、ニンニクを大量に摂取しないと疲れやすい体質なんです」

そもそも吸血鬼はヘモグロビンの自力生成が苦手なので血を摂取しているだけで、何等かの変異でヘモグロビン生成能力を持った吸血鬼は吸血を必要としないのである。ちなみに吸血鬼がニンニクを食べられないというのは誤りで、昔ヨーロッパの吸血鬼族の迷信として「ニンニクを食べると死ぬ」というものがあっただけだ。銀がダメというのも迷信である。銀の弾丸で心臓を撃たれたら吸血鬼じゃなくたって普通に死ぬ。

「でもサキュバスの力を持っているので身体から出るニンニクのにおいでさえ人を惹きつけてしまうんですね…倒れた人達は私の発するニンニク臭を吸って精気を無くしただけなんです」

黒羽嬢も女性であるから、こんな話をさせられるのはさぞ屈辱だろう。私も聞いていて何だか居た堪れない気持ちになった。匂いの少ないニンニクを食べろとかそういうレベルの話ではない。

「それならいい方法がありますよ」

様子を見ていた白崎さんが入ってきた。庭に生えていた薬草のような何かを持ってきている。その葉っぱを2枚3枚とちぎった白崎さん、それを粉状に挽いたものをドリップして黒羽嬢に勧める。

「何それ?脱法ハーブ?」

スギウラさんはいつの間にそんな日本語を覚えたのか…アメリカンコーヒーを片手にアンチョビのサンドイッチをほおばるスギウラさんはとてもじゃないが元イギリス人には見えなかった。

「違います!脱法ハーブじゃなくて脱臭ハーブです」

珍しくムッとした表情をする白崎さんは可愛かった。どんな臭いものでも脱臭できるのが特徴だそうだが、栽培はとても難しいらしく白崎さんは魔法を使って維持しているらしかった。

そんなわけで黒羽嬢には脱臭ハーブを定期的に送ってあげることになった。これにて一件落着。それにしてもこの脱臭ハーブ、飲み会の後とか餃子食べた後に便利なのではないか?と思うのだが白崎さん曰く「栽培の手間を考えたら困っている人以外には使えません」ということであった。

結局この日、私の新しい杖が威力を発揮する機会はなかった。だがその方がいい。平和である証拠だからだ。

つづく

雑記35

広島が出ている物珍しさから日本シリーズを実況しているオタクの多いサークル員リストを見ながらブログを書いています。去年のソフトバンクーヤクルトは見向きもしなかったオタク達が広島には食いついちゃって、私は日本シリーズは1999年のダイエーホークス初出場からずっと見ています(見苦しすぎる古参アピール)。いや前年の横浜ー西武も一応見てましたね。

まあ試合内容はけっこう白熱してて面白いんじゃないですか。贔屓チームが出てないので割とどうでもいいですが。一応パリーグのハムに勝ってほしいかな?

咲の実写化のキャスト発表を見ました。まあ演じる人はね、ぶっちゃけ誰でもいいんすわ誰でも。興味ねえし。ただ制服の生地が安っぽくてコスプレAVみたいなのは何とかなりませんかねえ?あまり制作予算がないのかもしれませんが、今日日コスプレイヤーだってもっといいの着てるでしょ。

職場でウンコをしていると天啓のように話が閃く、というのは以前にも申し上げたような気がします。多分その反動でさかこ君にトイレの呪いがかかったんだろうなあ。私がトイレでひとつアイデアを思いつくたびにさかこ君のトイレは逆流している…?

実習生が来る話は職場の窓口にたま~に来るJKを見ていて思いつきました。なんやコイツ…。でも宮前さん妹は話を書き始めた当初からいつか、どっかで出そうと思っていました。いじわるをしてはいけない。冷静に考えて街中に普通につめウンが出る町ってヤバくないですか?うわあ頑張ろう、町を綺麗にしよう。

鷺澤文香と宮永咲って誕生日同じなんですね。文香の出身地も長野県、読書が好きなところも共通していてそこはかとなく縁を感じます。シンデレラガールズの女子大生ズはなんでこんなにエロいんすかねえ~。レズなんか必要ねえんだよ!おちんぽジョイナスがいいんだよ!

渋谷凛は8月10日生まれ、野獣の日などと言っていたら実は五十嵐響子も8月10日生まれでした。野獣のような性欲の持ち主かもしれない(願望)。実はアレ、島村卯月が4月生まれで小日向美穂本田未央も12月生まれなので、しまむーの絡むユニットは誕生日がきれいに分散するようになってるんですね。やりますねえ!

ツイッターで駅弁の話をしていたら列車の旅をしたくなりました。在来線のグリーン車で弁当と飲み物を買って…最高やな。東海道本線の各駅で売られている鯵の押し寿司がなんといっても一押しですが、焼き鯖寿司や鱒寿司もいい。豊橋駅のいなり寿司も捨てがたいですね。私は九州暮らしが長かったのでかしわ飯(いわゆる鶏飯)が好きです。博多駅折尾駅鳥栖駅…どの駅も少しずつ違いがありました。飲み物は酒でもソフトドリンクでもいいです。旅を楽しむなら緑茶がいいですがトイレが近くなるのがネックですね。

しょかさんもさかこ君ももっと目立て目立て目立て!ブログ書いて(提案)

おわり