サケマス食いていぃ~

寿司ネタで最も人気があるのは「サーモン」だそうです。私はマグロの赤身が一番好きなんですが、程ほどに脂ののったサーモンは今やマグロを抜き人気ナンバーワンになっているということです。100円均一の回転寿司に行ってもサーモンにとろサーモン、炙りサーモン、キングサーモンに焼き鮭ハラスと色々置いてありますね。全種類食べるとそれだけで1000円以上になったりします。

しかしこの「サーモン」という魚、一体何者なのかご存知でしょうか?「鮭に決まってるだろ」と思う方が多いと思います。ところが一口に鮭と言っても「サケ」「ベニザケ」「ギンザケ」「カラフトマス」「マスノスケ」「タイセイヨウサケ」がいますし、近年では「信州サーモン」「絹姫サーモン」など謎の?サーモンも出現していますね。コイツらは一体何なのか?結局寿司に使われてるのはどれなのか?なんでサケの仲間なのにマスがいるのか?謎は深まるばかりです。

まず「サケ」です。日本に普通に生息しています。信濃川利根川那珂川、北海道で普通に獲れます。でも寿司屋ではあんまり見かけません。寄生虫が付いていることが多いのと、単に干したり焼いたりした方が美味しいからだと思います。北海道の郷土料理に使われるサケはコイツです。あと木彫りの熊が咥えてるのもコイツですね。

「ベニザケ」は日本では北海道の一部にしかいません。釣りが好きな方は「ヒメマス」をご存知かもしれませんが、アレはこいつの陸封(海に降らない個体群)です。アメリカ・カナダでアホみたいにたくさん獲れます。コンビニのおにぎりに入ってるのは大抵こいつですね。この「サケ」「ベニザケ」は天然個体がたくさん獲れるのであまり養殖されていないようです。

「ギンザケ」も元々は太平洋の魚ですが、とても養殖しやすい特性に目を付けた日本の水産業者によって南米へ持ち込まれ、チリで養殖されています。スーパーに買い物に行って今夜は鮭でも、と棚を見ればほぼ必ずチリ産養殖サーモンが売られていますが、ほぼ間違いなくコイツです。寿司屋のサーモンもコイツが多いのではないでしょうか。

カラフトマス」はマスと名前が付いていますが見た目・味・生態どれをとっても完全に鮭です。ちょっと小型のサケといった風情ですし、鮭缶の中身はほぼコイツです。鮭缶のラベルにはちゃんと「からふとます水煮」と書かれています。日本でたくさん獲れますが加工品になることが多く、寿司ネタにはあまりなっていません。

マスノスケ」もマスを名乗っていますがれっきとした鮭です。英名は「キングサーモン(絶対強い)」、その名に違わず大きさも1メートル超えは当たり前、味も脂がのって風味が良く人気があります。寿司屋で「キングサーモン」というのがあったらコイツの可能性が極めて高いでしょう。日本ではほとんど獲れないのでアラスカから輸入されています。

寿司屋のサーモンで最も一般的なのは「タイセイヨウサケ」でしょう。その名の通り大西洋に分布しています。ノルウェーで大規模な養殖が行われており、日本はその主要な輸出先の一つです。そしてノルウェーでは無菌状態の生簀で養殖する技術が定着しており、寄生虫が付いていないので生で食べても問題ないというのが特長です。そのため生食用のサーモンと言えばノルウェーのタイセイヨウサケが一般的というわけです。

しかし魚が大好きな日本人、いつまでも生食用サーモンを輸入ばかりに頼っていてはいけません。そこで現れたのが前述の「信州サーモン」「絹姫サーモン」です。これらの新種サーモンの親は「ニジマス」です。カリフォルニア出身のこのマスはサケの近縁種ですが高水温に強く成長が早いというメリットがあります。こいつに「ブラウントラウト(タイセイヨウサケの陸封個体)」を掛け合わせたものが信州サーモン、日本在来マスの「イワナ」を掛け合わせたものが絹姫サーモンということです。これらの魚は「鮭」と表記するとウソになっていまいますが「サーモン」なら特に問題はないようです(サーモンという言葉自体、サケマス類の学名サルモが語源ですからね)。このようなニジマス系のサーモンは「サーモントラウト」として広く流通しています。淡水養殖で供給量も調整しやすいので、いずれは「サーモン」といえばこれになるかもしれません。

私は鮭、もといサーモンは塩焼きが一番好きです。親戚からお歳暮に贈られてくるサケ、チリ産ギンザケ、ノルウェー産タイセイヨウサケ…どれも軽く塩を振ってグリルで焼けばご飯を無限に食べられる強力なおかずに早変わりしますね。味噌漬けにして焼いても酒粕に漬けて焼いても最高です。結局のところサーモンが何者かなんて、うまければ何でもいいのかもしれませんね。