大谷に勝ち、大谷で負けた日本ハム

パリーグのCS第1ステージが終わりましたね。2勝1敗でロッテが第2ステージ進出を決めました。ホークスファンとしては5年前のリベンジもあってロッテが上がってきたのは歓迎したいところですが、今年のロッテはCSに出るために故意死球で柳田を負傷させるなどダーティなチームですのであまり歓迎する気にはなれませんね。

もしCS制度がなく、あの試合が単なる消化試合だったらロッテも柳田に故意死球を当てたりはしなかったでしょう。消化試合を減らし、貧乏球団の赤字負担を減らすために導入されたCS制度ですが、それに胡坐をかいて最初からリーグ優勝を狙わない、挙句3位以内に滑り込むために汚いプレイをするチームが出てきてしまったことは残念でなりません。

さて第1ステージでは敗れた日本ハムですが、まず1戦目は先発・大谷が打ち込まれて大敗を喫しています。この試合の大谷は150キロ台後半の直球を簡単に打ち返されていましたね。クルーズや角中など元から直球に強い選手に打たれるのは仕方ないと思いますが、福浦のように速い直球への対応に難のあるベテラン選手や、今江のように変化球待ちを得意とする選手にも簡単に打たれていたのは気になるところです。もしかすると以前私が申し上げたように、本当に肩関節可動域の狭まりが起きて球が見やすくなっているのかもしれませんね。

第2戦では逆にロッテの大谷を打ち込んで日本ハムは逆転勝ちしました。ロッテ大谷は日本ハム大谷とは違って癖球を打者の手元で微妙に動かしたり縦の変化球を振らせたり、かと思うと一転して速球をズバッと打者の懐へ放り込んだりと多彩な攻め手を持つ投手ですが、この試合では「勝てる」という焦りもあったのか、若干投球が単調になっていましたね。

そして昨日の第3戦。ロッテはソロホームラン2本の得点を守りきって勝ちました。逆に日本ハムは毎回のように走者を溜めながら決定打が出せず、ロッテに押し切られてしまいました。この試合、私が勝負の転換点になったと見たのは6回裏と8回裏の日本ハムの攻撃です。

まず6回。ノーアウト満塁から近藤投ゴロ、レアード三振、矢野二直で無得点に終わりました。結果論でいえば近藤は最低でも外野フライは打っておかないと話になりませんし、レアードももう少しゾーンを絞って打たなければならない場面でした。ただこの場面に関してはロッテ先発・涌井の技量が近藤・レアードを上回ったということでしょう。エースとしての落ち着いた投球は、第1戦の大谷とは対称的でした。

問題は8回裏の日本ハムの攻撃です。1アウト1・3塁のチャンスを作り、ロッテは先日打たれた大谷から守護神・内へ継投します。これに対し日本ハムは19歳の期待の若手・浅間に代えて代打・大谷を送り出しますが、結果は空振り三振。結局最後の反撃のチャンスを逸した日本ハムはそのまま敗戦を迎えました。

私はこの「代打・大谷」が日本ハムの敗因だと考えます。ランナー1・3塁で打者が浅間のままだったら、ロッテはおそらく大谷を続投させていたと思います。その場合、バットに当てる技術が高く脚力もある浅間であれば、内野ゴロ併殺は避けることができ、最低でも2-2の同点にすることは出来たのではないでしょうか。一方打者・大谷には明確な弱点があります。それは落ちる球への対応と、それと併用される高め釣り球の見極めです。

投手がロッテ大谷のままであれば、打者・大谷でも対応できたかもしれません。栗山監督もそう思ったから大谷を代打に送ったのだと思います。しかし短期決戦において、あの場面でクローザーの投手が回跨ぎで登板してくることは想像できなかったのでしょうか?出来ないはずがありません。過去にそういう場面は何度もあったのですから。そして内の武器は精度の高い落ちる球とノビのある高めの直球です。要するに大谷にとっては一番打てないタイプの投手です。ここで代打の代打に誰かしらを送る選択肢もあったのですが、栗山監督は大谷をそのまま送り、ゲームの流れを変える最後のチャンスを逃してしまったのでした。

結局最後に勝敗を分けたのは、大谷にこだわった栗山監督と大谷を諦めた伊東監督の判断の差だったということです。大谷が打たれ、大谷を打ち込んできた日本ハムは、最後の最後で大谷へのこだわりを捨てられずCSの舞台から去ることになったのでした。