雑記97

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を観てきた

こっから容赦なくネタバレするのでまだ未視聴の人はブラウザバックしてくれ

 

正直言って見に行くまではちょっと不安だった。何しろツイッターのオタクが異口同音に「面白かった」「最高」としか言わないので、内心では「これ極限までハードル上がってるけど本当に大丈夫か?採点基準になるギャレス・エドワーズ版の『ゴジラ』も普通に面白かったし普通に面白い程度の作品が出てきたら落胆するぞ?」と思っていた。

まあ普通じゃないゴジラが出てきても『シン・ゴジラ』みたいに良い方向に普通じゃないのは歓迎だがアニゴジみたいなのが出てきたらそれはそれでイヤだけど。

とりあえずアニゴジ方面の心配は全くの杞憂だった。そりゃそうだ、天下のハリウッド様があんな金の洗濯バサミにゴジラがぶら下がったスクリーンセーバーなんか出してくるわけがなかった。

まず前作、ゴジラとムートーの戦闘で家族を失った家庭の記憶から入る。『ガメラ3』じゃん。なんだよハリウッド、ゴジラどころかガメラも研究してやがったな?そういえばパシフィック・リムも同アップライジングも主人公は怪獣に家族を奪われていた。もはや定番か?

中国・雲南省モスラの卵が孵化し、幼虫が出現する。若干キモイ。日本のモスラは幼虫も可愛いのに。主人公の少女がモスラの幼虫と心を通わせるシーン、ナウシカじゃん。お前もしかして無類のジブリ好きか?

怪獣の管理を主張するモナークと、駆除を主張する軍部の対立。議会でのやり取りの描写も◎だった。1984年版『ゴジラ』の会議シーンからミリタリーに寄せると今作、文官に寄せるとシンゴジラ。意味の分からんバストアップ3DCGのグダグダ評議で時間潰してたアニゴジは猛省してほしい。あと芹沢博士(ケンワタナベ)はゴジラのこと好きすぎて若干ヤバい奴になってた。ちなみに人類史上初めてゴジラの駆除に明確に反対したのは山根博士(1954年の『ゴジラ』)だったりする。

そしてキングギドラの登場シーン。テロリストがギドラの封印された氷を爆破してギドラを起こす。南極から怪獣…『ファイナルウォーズ』じゃん。派手なアクションシーンはハリウッドならでは。日本でも『ゴジラvsビオランテ』『ゴジラvsキングギドラ』あたりのバブル期の作品はけっこうアクション多いんだけど、いかんせん当時の技術だからねえ…

キングギドラにも怖さがある(アニゴジの金の芋けんぴの話はしてねえよ)。その巨大さを際立たせながらも、自分の邪魔をする人間を執拗に狙う凶悪さ、兵士を飲み込んでしまうシーンの恐ろしさ。ただデカくて強いだけじゃない。悪くて恐ろしい、まさに悪役の中の悪役。ゴジラモスラで幾度となく最強の敵として起用されてきたギドラ一族の面目躍如だ。

そしてラドン。余談だけど1956年版『空の大怪獣ラドン』は前半のホラー要素満載のクッソ不気味な演出からのど派手な怪獣アクション、そして当時の福岡の街並みの再現度の高さが素晴らしいのでぜひ観てほしい。今作のラドンも火山から登場する。その迫力たるやパヴァロッティに「フニクリ・フニクラ」を歌って欲しくなるレベルだった。

ゴジラキングギドラモナークの面々が見守る中、海上で激突。モナークのフラッグシップの飛行機、上からのシルエットを見ると巨大なB-2爆撃機なのだが、デザイン画を見ると割とスーパーXⅢの流れを汲んでいる感じである。う~むやはり相当平成vsシリーズを意識しているのか。

当初はややゴジラ優勢かと思われたが、軍部が突然「そこにオキシジェン・デストロイヤーぶっ放したわ。ミサイルでもうすぐ着くからおまいら逃げろよ~」などと言ってくる。ゴジラシリーズ史上最強クラスの武器をいきなりポプテピピックみてえなノリで撃ってくるアメリカ人、端的に言って面白すぎる。黒板にe=mc²とか書いて核についてわかってますアピールするどっかのアホとはもう根本から差がある。

地球上の生命体なら確実に殲滅するオキシジェン・デストロイヤーだがキングギドラには効かなかった。ここで「キングギドラは地球由来の生物ではない」ことが明かされる。ギドラは宇宙からの侵略者であり、ゴジラモスラは地球を守るために戦っていたのだ。『三大怪獣・地球最大の決戦』じゃん。ここでとっておきのを出してきたな。ラドン裏切ったけど。チョイ役に黒部進とか出てほしかったね。

最終決戦。力尽きたモスラは自分の生命エネルギーを全てゴジラに注入する。で、出たー!平成vsシリーズの定番ドーピングゴジラ!やっぱエンタメ作品はこうでなくちゃねえ、「この世界の法則に絡めとられた!今なら勝てるぞゴジラァー!」じゃねえんだよ、杉田の熱演は素晴らしかったけど。

ドーピングを受けたゴジラ、身体が内側から赤く燃焼しバーニングゴジラ状態になる。「ゴジラモスラは共生関係にある」というセリフの伏線をここでキッチリ回収。大味だが決して雑な仕事をしないハリウッド脚本。見とるかウロちゃん?脚本ってのはこういうことやぞ。

最後は赤熱線でギドラを吹っ飛ばして勝利…と思ったら熱線すら使わない。内部からエネルギーをスパークさせるだけで強い。ウルトラマンノアかな?倒れたギドラを踏んづけてもう一発。ああ^~たまらねえぜ。

ゴジラの最強技をあえて熱線にしなかったのも良い判断だと思った。何しろ庵野が天才すぎて前作『シン・ゴジラ』であらゆる熱線・光線技のバリエーションを見せてしまったので。庵野の「ゴジラの熱線ってのはこう使うんだよ」と言わんばかりの演出に対し「ならば熱線以外の技で倒すまで」と演出を盛り込んでくるマイケル・ドハティ、センスがありすぎる。とにかく最後のゴジラのスパークだけでも観る価値があるよ。

この映画に「人間ドラマが足りない」とか言ってた評論家がいたらしい。邦画の観すぎで頭が狂ったんじゃなかろうか。家族のために戦うマッチョなお父さん、頭わるわる女、主人公の女の子がいて、ゴジラを愛した被爆二世の日本人科学者、髑髏島の巨神にも出てた黒人科学者、そしてMI6あがりの(若干壮年期のコネリーに似た)イカれたイギリス人環境テロリスト、三枝未希に雰囲気似てる中国人の女性博士までいて何が足りないのか?記憶喪失の天才科学者か?不治の病に侵された美少女か?これゴジラだぞ?

とまあ、『シン・ゴジラ』は「オタクが妄想する本当にゴジラがいた時の対処法」の完成形で、今作『KOM』は「オタクが妄想する自分が作りたいゴジラ」の完成形と言えるだろう。甲乙つけがたいよホント。日本人としては心情的に『シン・ゴジラ』を勝たせてやりてえけどさあ。

こうなると次回作も期待しちゃうよね。ゴジラキングコングの両者は再び激突するのか?それともイカれた環境テロリストの作り出す(予定)バイオギドラの脅威に手を組んで立ち向かうのか?いっそ海底神殿の爆発で亡くなったはずの芹沢博士がウルトラマンティガになって戻ってくればいいんじゃないかな?

おわり