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第40話

SSのような何か

青梅市は東京都のやや端っこの方にある街だ。周囲を山に囲まれた町で、綺麗な水が得られる立地故に昔から酒造が行われている。新宿支署からは電車で一本だが、今日の大会会場は青梅駅からさらに奥に進んだところにあるため、青梅から奥多摩行きに乗り換えなければならなかった。

山の麓に作られた、科特庁の魔法師研修センター。ちなみに最寄り駅となった青梅線軍畑駅は利用者数が5~6倍に激増したという。元々1日あたりの利用者数が200人くらいだったせいだが…。山の斜面を活かした、経験の浅い魔法使いに実戦的な研修を積ませるための施設である。

受付で新宿支署チームとして出場する3人を見送り、まずは大会役員控室へ向かう。審判員や魔法科教育課長、同委員長らに挨拶を済ませて選手たちの居るメインフロアーへ降りると、各チームの選手たちが準備をしている。

「うひょひょ、この大会は良い。女の子ばっかしじゃ」

セクハラおじさんのようなことを口走る豊之内。

「あ、島畑先生~!」

そう言って走り寄って来たのは魔法師管理課の十時愛梨主事だ。彼女は管理課美城班のチームで今回の大会に出場する。私は昔彼女達に魔法関連の知識を教える講師をやっていたのだが、当時と比べると愛梨ちゃんは随分大きくなっていた…主に胸が。

「愛梨ちゃん久しぶりですね。大会に臨む自信のほどは?」

私は彼女の胸の方に目線を向けないように努力しながら質問した。

「バッチリです~。美波ちゃんも有香ちゃんも調子は良好ですし、優勝を狙いますよ」

えへん、と胸を張る愛梨ちゃん。おっぱいが勢いよく跳ねる。美波ちゃんこと新田美波主事は彼女の同期で、やはり私が講師をしていた時に教えていた子である。有香ちゃんこと中野有香主事は二人とは異なり、後天的な補強を受けていない普通の魔法師である。新宿支署に来ている一之江さん鹿島さんの同級生だ。

「島畑先生…」

小声で呼びかけられて振り返るとこれまた見慣れた顔が。魔法師管理課、高木班の鷺沢文香主事である。彼女も愛梨ちゃんや美波ちゃんと一緒で、私が受け持っていた子の一人である。彼女と同じチームの相葉夕実主事もそうだ。

「おやおや、これではどこのチームを応援してよいものか…」

私は頭をかいたが、新宿支署の職員として来ている以上熊谷さんたちを応援するべきなのだろう。皆怪我なく大会が終わってくれることを祈るばかりである。

そうこうしている内に大会のレギュレーションについて発表があった。今回は魔法師同同士の模擬戦闘ではなく、3人一組で制限時間内に怪物を模した標的を倒していってスコアを競うというオーソドックスな形式である。これなら実戦経験の豊富な新宿支署の3人娘は割と有利だろう。

「そういやさ、何で男子の大会はやらねえの?」

横から豊之内に聞かれ、私は前年の大会を思い出してしまった。

「去年チーム米長で出た時にね…」

たしかに、昨年までは男子の部もあった。男子は5人1チームだったので、私は米長コマンダーの元で神楽坂、土方、中須田と組んで出場した。結果優勝はしたのだが全員大会に熱中するあまり無制限に必殺技を使い過ぎ、試合会場となった埼玉県某所の原っぱをクソまみれにしてしまったのだ。

「それで周辺自治体に酷く怒られちゃってね、男子の部は今年から廃止になりました」

流石の豊之内も呆れていた。

(つづく)