読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

あるサークル員の後日談

この日、私は都内にあるSNSの私邸を訪れていた。そこには私とSNSのほかにも数名の男達が集結しており、偶然か意図的かはわからぬが過半数は前日の事件の当事者であった。当事者といっても、私やry先輩は事件をただ呆然と眺めていただけの観客に過ぎなかったのだが。

「え~それでは、第N+1回shokaさんをイカせ隊会議を始めま~す!イエ~イ!」

相変わらず軽薄な口調でMが宣言した。小奇麗だがどこか異様な佇まいの白人の男。イギリス出身のこの男は、なにやらとんでもなく高学歴のスーパーエリートだったらしいが何故か日本で大学生をしている。私がMと知己を得たのは大学入学後のことであるが、彼は自身の実績と実力を鼻にかけない性格故に昔から交友関係は広いようだった。(コイツといいカレンといい金剛といい、最近のイギリス人はこういう軽いノリがブームなのかな?)イギリス人=気難しいというイメージを持っていた私は未だに違和感から解放されていない。それにしてもこのMという男、つい先日暴力の集中豪雨を浴びてお餅と化していたというのになんと立ち直りの早いことか。

「え~でもshokaさん強いからなあ…イカせたいけど正面から行っても返り討ちにされるだけじゃない?」

気だるげに返答したのは、この家の主人である、SNSと呼ばれる私の同級生だ。大柄で幅と厚みのある体躯の持ち主で、教育実習先では『ガタイMAX』と呼ばれていたそうだ。かつて未開の蝦夷地に乗り込み、自然の脅威や外的の来寇と闘い日本の穀倉とも言える北海道を作り上げた、あの北海道開拓使の末裔であるといわれている。彼は先日、shokaさんを襲撃したものの返り討ちに遭って戦意を喪失していたことから、やや積極性を欠いているようだ。それでもまだイカせたい願望を喪失していないのは大したものだと私は思った。

「そうだよね~LGNの出現は偶然だったにしてもshokaさんは剣の腕が立つからね~」

くねくねと奇妙な動きをしながらMは答えた。SNSは更に言葉をかぶせる。

「だからshokaさんが警棒を振れない状況を作らなきゃいけないよね。AMMYなんとかしろよ。お前が盾になってshokaさんの攻撃を全部受け止めるとか」

「え~無茶言わないでくださいよ~。無理に決まってるでしょそんなの」

思いがけない提案を振られたAMMYは飲んでいたコーヒー牛乳から口を離し、苦笑して答えた。AMMYは癖毛が特徴の小柄な男だ。大学院に進んで研究活動に従事しており、人格面はともかく学業成績と研究業績に優れている彼は、いずれは教授への昇進が確実視されている。彼は私と同様、この不毛な会議の参加メンバーとしては珍しく?shokaさんの貞操よりも女性の膣に関心があるようで、あまりshokaさんをイカせる話には乗り気でないようだ。

「ryさんのお考えは?」

私の唐突な質問に、ry先輩は奇妙なアクションを起こして反応を示した。長身で痩躯のry先輩は、サークルだけでなく学部においても私の先輩にあたる。細身でシャープな印象を与える体躯に、鋭敏さを感じさせる顔つき。その一方で全身からくたびれたオーラを発しており、そのアンバランスさがどこか異様な雰囲気を作り出している。しかしながらサークル内では人望の厚い人物であり、彼に嫌がらせをし貶めようとしていたある男などは、逆に各方面から女性関係の醜聞を暴かれサークル内で総スカンを喰らったほどである。

「え~…薬でも盛ればいいんじゃないですか」

投げやりにry先輩が言い放つ。サラッととんでもないことを言う人である。

「どうやって盛るんです?まさかshokaさんも我々が出したアイスティーを無警戒に飲んだりはしないでしょう」

真面目な口調でSNSが反問する。その時、沈黙を保っていた一人の男―SKKと呼ばれる、哲学を専修する謎多き男―が口を開いた。

「僕はshokaさんとカラオケに行く機会があります。その時にshokaさんのドリンクに薬を盛ることが出来るかもしれません」

「無理だ、前回の件でお前が我々とグルだということはshokaさんに割れている。カラオケには誘ってもらえるかもしれんが警戒はされるだろうよ」

私は言い返した。先日の事件でSKKがAMMYとの連絡役を担ったことを思い出したためである。shokaさんも先日の一件で、自分の貞操が危機にさらされているという事実を間違いなく認識したはずであり、警戒レベルを上げてくることは想像に難くなかった。

「いや、いい方法があるぞ」

唐突にMが声を張り上げる。

「「「いい方法?」」」

私とSNS、それにry先輩がハモった。

「shokaさんのカラオケ仲間といえば銀子!彼女を使う」

銀子とはMのガールフレンドだった女性である。小柄で愛嬌のある女性で、サークル内で彼女を嫌っている人間はおそらくいないだろうと思われる。彼女がサークルの新人だった時、Mは渾身の一女囲いを放ち彼女を射止め、以来サークル内での公然非公然を織り交ぜた数々の妨害を潜り抜けて交際を続けてきたのであった。その後生活サイクルの不一致などから交際関係は解消しているが、現在も友人関係は続けているようだ。

「彼女に薬を盛らせるのか?いくらなんでも同意しないだろう」

私は反論したが、Mは自信満々にこう続けた。

「銀子に盛らせるわけじゃないよ。彼女には俺達がカラオケボックスへ入る手引きをしてもらうだけだ。そしてshokaさんがトイレに行っている隙にドリンクに薬を入れる。さらに万全を期すためにSKKにはLGNを引きつけておいてもらう。これでshokaさんの貞操は俺たちイカせ隊のものだ!薬!昏睡!セックス!そのための―」

「あれえ~?服のサイズが大きいよお~?」

SNSはパソコンのスピーカーを切っていなかったようだ。巻雲のボイスによって渾身の決めゼリフを遮られたMは、いつものように身体をくねらせて悶絶していた。

果たしてshokaさんは今度こそイカされてしまうのか?MとSNSの作戦は実を結ぶのか?私としては、いつも通りイカせ隊は特に何も出来ないまま終わってほしいところであるが―(つづく…のか?)