読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

墜落事故

今週、フランスで航空機の墜落事故が発生しました。事実関係をおさらいすると
ルフトハンザドイツ航空の傘下、ジャーマンウイングスの定期旅客機
・スペイン、バルセロナ発ドイツ、デュッセルドルフ行き
・使用機材はエアバスA320、機齢24年、元ルフトハンザ機
・墜落地点はアルプス山脈のフランス側、標高は2000メートル以上
・墜落前の交信では異常はなく、墜落直前に一気に急降下した後通信途絶しレーダーから消失した
とのことです。ブラックボックスは破損していたものの回収され、解析が進められています。それにしても、何故墜落したのでしょう?A320に限らず、現在のジェット旅客機は機体の欠陥による事故は極めて少ないのが特徴です。直近10年の大事故を見ても、機体そのものの欠陥による事故はほぼありません。ということで、私なりに考えられる原因を述べてみたいと思います。
1.悪天候
最新鋭のジェット機でも、強烈な下降気流(マイクロバースト)や落雷の直撃があれば墜落はあり得ます。しかし当日はスペイン、フランス、ドイツいずれも好天であったとのことですし、A320にはウインドシア警報装置(強烈な下降気流を探知し警告する装置)が装備されています。従って天候による墜落ではなかったと私は分析します。また事故は日中の晴天下で発生しており、飛行ルートは定期航路でパイロットにとっても不慣れな空域ではなかったことから、視界不良で山に気付かなかった可能性も極めて低いでしょう。そもそもA320には接地警報装置もあり、山に接近すれば機首を上げて上昇するよう警報が鳴ります。
2.整備不良
これは近年でもよくある事故原因です。事故機は24年も使用された機材ですから、整備ではカバーしきれない故障があったのかもしれません。とはいえ、ルフトハンザの機体整備は世界一厳密と言われています。また墜落に繋がるような故障が見つかれば、当然その機体は運航から外れます。ジャーマンウイングスは経営状況が芳しくなかったという話もありますが、A320は多数保有している機材ですから故障したものを無理に飛ばす必然性は全くありません。またエンジンが停止したとしても滑空によってフランスの最寄り空港へ不時着を目指すことになるので、真っ直ぐアルプスへ突っ込んだことと矛盾しますね。
3.テロ、ハイジャック
これは可能性としてはありますが、アメリカ・フランス・ドイツの当局は口を揃えて否定しています。そもそもテロ目的であれば、ナローボディ150人乗りのローカル線を狙う理由が理解出来ません。今のスペインの空港警備をすり抜けるだけの能力があるテロリストならば、より多くの犠牲者の出るA380B747を狙うはずです。実際2001年の同時多発テロでは、200人以上が乗れるB767B757が標的になっています。また事故から三日が経過したにも関わらず、どこの組織も犯行声明を出していません。以上の点から私はテロ説を否定します。
これはまずないでしょう。高度10000メートル以上を飛んでいる鳥がいるとは思えません。
5.離陸後の機体破損
これは意外と発生率の高い事故で、エンジン内部が氷結した、エンジンに火山灰が詰まった、鳥と衝突して対気速度計が壊れた、電波高度計が作動しなくなった等の前例があります。ただ、これらの事故では必ずパイロットからの救難信号が発せられますし、事故発生後直ちに最寄りの空港へ降りる手配をします。管制官にこうした信号がなかったことを考えると、これらの可能性は低いと言わざるを得ません。
6.機内与圧の喪失
報道によると急降下の直前、機内で急減圧が発生した可能性があるそうです。減圧発生の可能性は大きく分けて二つあり、機体に穴が開いて空気が流失したか、与圧をオフにしていて飛行高度が上がって空気が抜けた可能性が考えられます。前者であれば上記の機体トラブル同様、直ちに救難信号が発せられるはずですので、そうした交信が無かったことは些か不自然に思われます。後者の可能性は否定出来ません。あまり知られていませんが旅客機内の与圧はオフにすることが出来ます。与圧オフに気付かず離陸し、高度が上がったことで機内が酸欠になり乗員が意識を失った可能性は考えられます。ただ、その場合は墜落直前の急降下の説明がつきません。自動操縦を解除しない限り急降下は出来ませんが、意識を失ったパイロットが自動操縦を解除するのは不可能です。
7.パイロット自殺
普通ならばあり得ない話ですが、実は前例があります。アメリカからカイロへ向かっていたエジプト航空機が大西洋上で突然急降下して墜落した事件では、副操縦士が自殺のために飛行機を意図的に落としたと言われています。本来操縦室には二人のパイロットがいますが、何らかの理由で一人が退室している場合この犯行は可能です。例えば一人がトイレに行っているとか(エジプト航空の事件では、機長がトイレに行った隙に副操縦士が操縦室に鍵をかけて犯行に及んだという見方が有力とされています。)、客室乗務員と打ち合わせが必要な場合などです。尤もこの説は完全に憶測の域を出ません。
以上の点から通常の事故の発生要因と、今回の墜落機の置かれていた状況にかなり乖離がある気がしますので、私は個人的には自殺の可能性を疑っています。とはいえ全ては憶測でしかなく、真相は近い内に調査によって明らかになるでしょう。私は今回の墜落事故の犠牲者を悼むとともに、当局による調査が順調に進むことを願っています。